精魂込めて創り上げた事務所を他人に任せる、その決断に至るまでの葛藤は、経験したものでなければ分からないものだろう。
これまでに相談だけで終わった案件を含め、悩みに悩んだ末に面談を決め、さらに事業承継を決意するまでに数年も要したものもある。
決断できない事業承継
先日お会いした税理士さんも三度目の面談だったが、いわく、考えが波のように上げたり、引いたり、思いがまとまらない。
話の中でも同じ内容を繰り返し質問され、その回答を噛み砕きながら反芻されるものの、事業を承継するとの結論にはなかなかならず、再考するとの結論に終わった。
その際に一番問題になったのが、事務所を承継したら、数十年毎日仕事をしてきた、その時間に全くすることがない自分を想像したり、ぞっとするという。
税理士の引退は…
確かに定年を前に、それなりの準備を迫られると同時に、諦めることを強いられるサラリーマンに比べると、経営者である税理士の引退は簡単なものではない。
自分のことだけを考えて事務所を閉鎖する税理士もいるが、職員の生活を考えざるを得ないから、いつまでも悩み続けるわけにはいかない現実がある。
そのなかで最適な解決法を見つけなければならない税理士にとって、仲介者から絶好の対策が提示されるかいなか、まさにタイミングひとつ。
悩みながらも、経営の重圧から解放されたいと思う税理士の求めている解決策が示されなければ、相談だけで話は終わる。
社員税理士に
ただし、相談時に最適な答えが見つからずに別れたものの、数年後に再度の相談があり、事務所をM&Aで法人に渡し、気楽な社員税理士になった税理士もいる。
社員税理士として、事務所に毎日勤務しているものの実務は法人の税理士に任せ、自身は事務所の看板として顧客の維持に努め、経営からの重圧からは解放された。
まとめ
この税理士の場合、法人にその気がなければ、タイミングが合わなければ、いまだに個人事務所のオーナーの重責からは離れられなかったはず。
まさに、事業承継・M&Aはタイミング次第で成否が決まるわけで、仲介者として″在庫″はしっかり管理して、いつでも最適な解決策を提示できる体制でありたい。