税理士事務所の経営は一般企業と異なり、資格がなければできない。そのため、自分の子供が試験に合格することを何より願う。
ダブルマスター制度が改正されるまでは、税理士試験に挑戦せずに、会計と法律の修士課程を修了し、修士論文をクリアすれば、晴れて税理士になれた。
確かに、この制度を利用して税理士になり、親の事務所を継いでいる税理士も少なくないし、試験に合格していなくても経営者として立派に活躍している人も多い。
しかし、制度が改正され、修士課程を修了しても会計と税法のそれぞれ1科目を試験合格できず、税理士になれない税理士の子弟が出るようになった。
息子に事業承継できない…
それでも、試験に挑戦し続ける子弟を見守り続ける税理士にも、年齢による老化という事務所経営に大きな壁が立ち塞がるようになると、″待ち時間″も少なくなる。
その時点で、子供が試験にギブアップした税理士は、事業承継の相手探しが始めることになるが、求める相手の条件は厳しくなり、簡単には決まらない。
事務所の職員として重責を担う子供の意向を無視することはせず、その立場を尊重できる相手でなければ、当然受け入れることはできない。
とはいうものの、資格がない子供のわがままを承継者に認めてもらおうなどと考えると税理士はいないが、やはり事務所の歴史を継ぐ子供を残したいと考える。
事務所を引き継ぎ…
その思いを受け入れて事務所を引き継ぎ、名前は変わったが、前の先生と同じ、それ以上のサービスが提供され顧問先も喜んでいる仲介事例も少なくない。
法人から派遣される税理士は数年で交代するが、事務所の屋台を守るのは、試験にさんざん跳ね返され、親の後を継げなかった息子さんで、役職は所長代理。
言ってみれば、番頭さんとして事務所を切り盛りし、この人がいなければ、事務所を引き継いだ法人も代わりの優秀な人材を確保できず、ギブアップしたかも。
まとめ
そこからの事業承継の教訓は、事務所の顧客が優良かどうか、それ以上に重要なのが、引き継ぐ事務所に優秀な人材がいるかどうか、そこが問題だ。