税理士法人がある日解散し、昔の個人事務所に戻ってしまった。顧問先にしてみれば、サービス内容が変わらなければ何ら問題ない。
ただひとつだけ、毎月支払う税理士報酬から10%の所得税を差し引き、納税する面倒が戻ることになる。顧問先には厄介なことが増えることになる。
今回紹介する事例は、税理士法人を親子で設立していたが、若い先生が本業より重点を置いた周辺業務が拡大し、売上も本業を上回るほどに成長。
その結果、経営方針で親子間で意見が会わなくなり、親も事務所を息子には渡さないと言うので、息子の税理士は独立し、法人の設立要件が満たせなくなった。
息子を後継にしたはずが…
息子の税理士を後継にしたはずだが、その後継者と意見が会わなくなり、個人事務所に戻った老先生は改めて後継者を探すことになった。
所属する支部では、息子と喧嘩別れしたとの風評が壁となり、後継に手を上げる税理士はなく、やむなく仲介を求めることとなったわけだ。
依頼を請けた当支援室で事情を訊くと、老先生と別れはしたが、将来的には戻って来るだろうと考えていたが、息子さんは戻る気はないときっぱり拒否。
というのも、自ら設立したコンサル会社が上場できる可能性が高くなり、税理士業務に魅力を感じず、二足のわらじは履かないと決めたという。
息子さんの復帰がないことがはっきりしたので、後継ということではなく、むしろM&Aの観点で、要請後短時間で相手が決まり、交渉開始。
相手の税理士法人は、やはり息子さんの復帰があるのではないかと、しつこいと思えるほどに確認を求め、最終的に息子さんとも面談し、最終判断。
まとめ
結果として、老先生を社員税理士とする税理士法人の支店を設立し、顧問先には、経営統合によりサービスに向上を図ることにしたと、再度の法人化を説明。
息子さんの独立からの法人解散と後継者問題の解消のための再度の法人化、老先生の最後となるこの選択で、事務所経営の心配事は解消されることになった。