職員4人の事務所を経営していた税理士が、不治の病を患い、長年仲間として様々な活動を共にした同年輩の税理士に、死後の様々なことを託した。
なかでも、入院先に度々見舞いに訪れた親友との話し合いで、大学院に通う職員が数年後には資格を取れるので、それまで事務所を預かってもらう約束になった。
同時に、収入のなくなる奥さんには、事務所からの収益の一部を生活費として手当てしてもらうことも約束し、税理士の死後のある期間は、確かに月々支払われた。
しかし、資格取得のため大学院に行っていた職員が、事務所を預かっている税理士に無断で顧問契約を結び、報酬を得ていたことが判明し、解雇される事態に。
事務所を職員に渡せない…
そのため、亡くなった税理士との、事務所は職員に渡すという約束は果たせなくなった。預かっている顧問先はそのまま預かる税理士に手に残った。
将来的には、職員が資格を取り、事務所を引き継げば、所長の未亡人には承継の対価を払うとの話も、その税理士は保証人のような立場で確認していたという。
しかし、職員の不正が判明し、解雇した後、それまで支払われていた報酬の一部は一切支払われなくなったというのだ。
収入のない未亡人が支払いを要求すると、亡きご主人と竹馬の友とも言われるほどの仲だった税理士は、辞めた職員に払ってもらえと開き直ったという。
どんなに未亡人が頑張っても、顧問先を預かってもらっていたと言っても、本来は何ら権利のない話。しかも、すべてが口約束で、契約書はない。
確かに、職員を辞めさせるまでは、毎月応分の手当てが支払われていたからと言って、それは手元に残る顧問先からの報酬の対価には、明らかに不足する金額だった。
ただし、対価を決めるのは当事者だから、端からとやかく言えるものでもないが、道義的な責任を考えると、親友の未亡人には誠意をもって対応すべきだろう。