税理士事務所職員の給与水準は、相場として他業種に比べて低く、事業承継の現場では疑問が飛び出す。
というのも、税理士試験に挑戦中の職員には、休日付与など相応の優遇措置を設けているので、その分給与は安いとの"常識"がある。
それでは、受験を諦めた職員の給与は上がるのかと言えば、そうは問屋が卸さず簡単には給与は上げられない。
また税理士になれば、資格手当が上がるので、それなりに給与は上がるが、資格のない職員はじっと我慢が続く。
個人事務所では、労働組合があるわけでもないので、給与を上げてもらいたい職員は、直接所長と交渉するしかない?
しかし、自ら所長に直接交渉を申し込もうものなら、へそを曲げる所長もいるだろうから、なかなか難しい。
給与引き下げはご法度
そんな事務所の事業承継話が進むと、譲り手の所長は「職員の給与は安いから、上げてやって欲しい」とは決して言わない。
多くの所長が、「所長が代わると給与が下げられないかと職員が不安に感じているんです」と、交渉の場で説明する。
職員の労働条件は変えないようにするので、給与は上がっても下げることはしないのが仲介者の基本的な考え方。
しかし、労働生産性がかなり低い場合には、給与は下げないが、その金額に見合った生産性にアップするよう指導される。
ちなみに、ここ数年はベースアップはなく、賞与も大幅にダウンしている衰退気の事務所では、士気も低下傾向に。
これを引き上げるのは大変な労力が要求されるが、それができない引き受け手は事業承継交渉には参加は止める。
職員の給与が高すぎて、引き受け手に迷惑ががかると考える先生は、事前に手を打つのがいいだろう。
まとめ
いまや年功序列の給与体系は税理士事務所には合わず、成果主義を基に自らの給与を獲得できるという傾向も出てきた。
いずれにしても、資格がない職員が税理士事務所で生きていこうとするなら、覚悟は必要だろう。
事業承継でぬるま湯からの脱出を要求される職員にはきつくなるかもしれないが、生き返った職員も少なくない。