かつて、関東圏の事務所の事業承継をサポートしたときに、ビックリしたことがありました。
番頭役を20年以上にわたりこなしてきた50代半ばの男性職員が、友人の会社の経理部長に転職すると言う。
事業承継にとって、お客さんの窓口である職員が辞めることは、ある意味失敗と見てもおかしくない。
それも所長の代行でもある番頭さんが、事業承継の時点で辞めるとなると、その悪影響はかなりなもの。
そこで、辞める理由を訊くと、友人からの事業の拡大で経理を見る信用できる人材が必要と口説かれたという。
所長は真面目な青年で、これまでも誠実に勤めてくれていたので、申し出を気持ち良く受け入れたというのだ。
ウソの転職理由
ここまでは良くある話だが、疑ってかかっていた担当者は、転職する業種を訊いてみた。
その答えは、およそ経理担当者が必要なものではなく、事業規模も町の食堂程度で、社内で十分できるもの。
そこで、所長に辞めるには裏があり、友人からの申し出はウソだろうし、何とか説得すべきだと助言。
一時的には説得に応じたが、事業承継の契約が終わり、承継作業が進むなかで、番頭は思いを成就した。
つまり、担当先1000万円をお土産に、同業者の事務所に移っていった。それも友人の会社に行くと嘘を言い。
同業者へ転職
そのウソが暴れたのが、新たな経営者が挨拶回りに行った地元の金融機関の担当者の一言。
○○さん、やられましたね。番頭さんは某税理士事務所にいますよ。しかも、同じ地元の同業者の事務所に。
その職員が辞めて当然で、転職話は嘘だと判断したのは所長の青色決算書をチェックしたとき。
理由は賃金
番頭さんの給与が50代半ばで、お子さんも二人いるのに3百数十万円、ビックリの安さに、辞める理由を発見。
事業承継の話が進んでいる中で、番頭さんはすでに話をまとめ、この時とばかりに恨みながらの転職だった。
すべての事業承継をする事務所がこのようにひどい状態ではないが、概して安いと認めざるを得ない。