TPPへの参加で、税理士業界にも波紋が起きるのではないかと言われている。
10数年前に、米国税理士資格試験が、米国大使館内のIRSにより、東京・青山の国連大学で実施された。
都合4年間ほど実施され、相当数の日本人が米国税理士の資格を取得した。
その時にも、米国税理士が、日米相互承認で、日本の税理士資格を取得できるのではないかと言われたものだ。
しかし現実には、噂の段階で雲散霧消してしまった。
ちなみに、税理士は徴税に貢献する建前になっているので、国税等の確保のためのサポーターでもある。
さらに言えば、国税は歳入の根幹でもあるから、日本の税法が分からない人に税理士資格を与えることはない。
しかし、資格がなくても税務申告書の作成が許されている米国のやり方を、ごり押ししてくることはあり得る。
ここで誤解があるのは、米国の無資格者が有料で申告書を作成できても、納税者の代理ができるわけではない。
税務調査などで、無資格者は一切IRSの調査官に対して、納税者に代わって対応できない。
したがって、税務当局との争いになった場合には、弁護士等を雇わなければならない。
米国税理士であれば、この争いに対して、納税者に代わり堂々と当局と渡り合えるので、納税者には助かる。
このような米国税理士が日本の税理士と同じ資格を取得できるかといえば、答えはノーだろう。
それよりも、国内の金融機関や農協、その他の事業組合などに確定申告書の作成が許されるほうが問題だ。
時代は次第にその方向に向かいつつある。
所得税の確定申告自体もかなり簡略化され、医療費控除などはサラリーマンが自分で申告する人も多い。
慣れれば、小規模な事業所でも自分で申告書の作成などもできるので、税理士の存在も薄れがち。
単に顧問料として毎月低額の報酬を請求することに抵抗する納税者も多くなっているとも言われる。
そん中で、法人企業も減少、確定申告する人も減少となれば、税理士業務もはがしい競争に巻き込まれる。
なにもTPPがなくても、時代の要請で、ますます資格だけでは食っていけなくなってきている。
そんな中で、従来通り顧問先に、”お布施”型顧問料を請求できる税理士事務所の先生は少数派に。
税理士業界にも大きな流れが来ていることは確かなことで、強制入会の支部運営もターニングポイントになる。
事業承継支援室長
大滝二三男