承継交渉で必ず話題になるのが、引継ぎ期間。
譲り渡す先生は、顧問先の状況をしっかり受け継ぐためには十分な時間必要だと言います。
これに対して承継する先生は、これまで通り、やるのでそれほど時間は必要ないという。
事務的に進めるのであれば、承継する先生の言い分がほぼ正しい。
しかし、すべての顧問先が、承継に賛成かと言えば、そうではない。
「先生だから、お願いしてきたし、うちのことは先生しか分からない」と顧問先は言う。
このような顧問先は、税理士を単なる帳簿や申告書を作ってもらう人ではなく、世間話の相手ともみている。
40年余り税理士事務所を経営し、数か月前にバトンタッチした先生も、毎月事務所を訪問する顧問先がある。
その社長さん、先生に政治経済の話を1時間から2時間、思いのままを話す。
先生とともに承継した先生も一緒に行くが、社長さんの顔は常に譲り渡した先生のほうを向いている。
「あの社長は話を聞いてあげられるから、高額な顧問料を払ってくれるんですよ」
この社長さんの場合が例外かと言えば、ほとんどの先生にこのような顧問先がある。
しかし、だからと言って、必要以上に引継ぎ期間を延ばすわけにはいかない。
支援室がお手伝いしたケースでは、引継ぎそのものは1年程度、短いものでも半年はかかる。
なかには先生が即引退し、ほとんど息継ぎを手伝わないケースもあるが、このケースは顧問先が大幅減。
したがって、各事務所の事情に会った引継ぎ期間に、譲り渡した先生の協力が是非必要。
承継する側も先生が職員に任せきりにならず、先頭に立って新しい顧問先との関係を作り上げてもらいたい。
事業承継支援室長
大滝二三男