国税職員が退官するのが毎年7月初め、税理士を希望する人は退官後登録へ。
しかし、税理士業界の景況が悪化しているこの数年は、税理士登録する人も減少。
それに拍車をかけたのが、4年前の顧問先の斡旋禁止。
それ以前は、国税局幹部や税務署長・副所長のために、後輩たちが企業を訪問。
税務署の総務課長や副署長が、先輩の顧問就任を依頼して回っていた。
顧問先の斡旋禁止により、現役幹部職員には過重な負担がなくなった。
禁止されるまでは、顧問先を5~10件斡旋してもらうことで、退官すると同時に税理士業務が始められた。
それが斡旋禁止により、顧問先ゼロからのスタートとなったことで、税理士登録は激減。
中には、退官後の税理士登録をあきらめ、再任用により給与も大幅減で、調査官になる人も。
さすがに署長経験者が再任用で、ひらの調査官なるのは少ないが、60歳を超えた調査官には?
その一方で、ここ数年増えているのが、税務職員当時の肩書を”活用”した税理士業務。
難解の税法の解釈を巡り、税務署との協議を重ねていくには、専門知識豊富なOB税理士が最適。
自らが取り扱いを模索したという経験を持つ分野で圧倒的な力を持っていれば、それだけで戦力になる。
さらに、ここ数年、セカンドオピニオンを売りにしている税理士が急増。
その顧問としてもOB税理士がバックに控え、OB税理士だけ作る集団もこれを売りにしている。
実質的に商売になっているのだろうかと訊いてみると、税務調査に対応できることで採算も取れるとか。
中には、難解な案件を処理することで、100万円単位の報酬を得ている集団もあるという。
こうなると一般の税理士には到底及ばない報酬となり、そんな人材を抱えられるところは限られえくる。
顧問先の斡旋禁止により、税理士業界には一部福音がもたらされたと同時に、新たな脅威も出現した。
実はこの時期に、この7月に再任用するのか、また8月は税理士登録するかどうか、意思を確認。
国税で優秀な実績を残した人でも、斡旋がなく、営業が不得手なひとは、再任用の道を取る可能性もある。
これらの人を確保できるのはこの時期を外すと、もう一年間待たなければならないわけだ。
上場企業の子会社や孫会社を顧問先とする税理士に、有力なサポーターとなるのも一部のOB税理士。
指をくわえてみているだけでは、競争力を削がれることとなる。それこそ「今でしょう!」
事業承継支援室長
大滝二三男