昨日のブログに読者から「顧問契約がなかったら、いつでも辞められるし、お金も勝手に決められちゃうじゃないの」といった趣旨のコメントが届きました。
実際に事業承継の仕事でお会いする先生の事務所で、特に地方の古い事務所では、お客様と顧問契約を締結しているのはマレです。
日本の古き良き伝統とでも言いましょうか、ほとんどが口約束で成り立っています。ですから、顧問料が高い安いはあまり問題になりません。地縁血縁の固い絆で結ばれてもいるようです。
中には”出世払い”、つまり、「儲かってからでいいよ」なんて新規のお客さんに言う先生もいるようです。でも。それはリップサービス(ひょっとして死語?)で、実態はやはり、月々ちゃんともらっていたりします。
なぜこんなことが分かるかというと、事務所承継を希望する税理士さんからは業務内容をあらゆる点でチェックします。そこで顧問契約書があるか、ないかは重要なチェックポイントで、必ず回答を求めます。
その結果、前述のように多くの税理士事務所が顧問契約をしないで、業務を行っている分かるわけです。
事務所を承継する税理士さんにしてみれば、お客さんが新しい顧問として自分を信頼し、契約を継続してもらえるかどうか不安です。ですから、必ずこもん契約を結んでいるのかどうか質問となります。
気軽に顧問契約書にサインしてもらえれば一安心。ところが、譲り手の先生に相談してみると、「契約書はやってないので、辞めたほうがいいじゃないですか?」との一言。
「堅苦しい契約書なんて、中小零細企業には向かない」というのです。契約書にサインするのが嫌で、他の事務所に移られては身もふたもありませんから、「しばらく様子を見ましょう」というのが、ほとんどのケース。
それでも、顧問料の自動振り替えを採用している事務所にとってみれば、これこそ大事な契約。「毎月集金に行くのも仕事のうち」という事務所にとっては、今や普通になりつつある自動振り替えも、「断られますよ」となる。
実に契約書がないのが、信頼関係のある証とばかりに、時には電話で「社長!来月から顧問料挙げてもらいますよ。これだけ儲かってんだから、」なんて景気のいい話も、契約書がないと簡単にオーケーが出ることも。
しかし、そんな話も過去のものとなりつつある今、やはり、契約書で権利と義務をしっかり把握しておいたほうが、お客さんのためにもいいのではないでしょうかね。
将来、事業承継するときに、バトンタッチする先生が困らないようにするのも、先達としての義務のような気もしますが、いかがでしょう。
事業承継支援室長
大滝二三男