税理士事務所の経営者は税理士さん。今やそのキャリアが30年以上の先生方も、開業間もないときは、妻帯者であれば、奥さんも事務所で働いていた。夫婦力を合わせ、事務所を拡大していった歴史がある。
今や奥さんも事務所に出ることはなく、自宅で事務所の帳場をつけるなどの仕事をして、専従者給与を手にしている人も少なくない。さらに、先生から事務所の問題を聞き、その解決策を一緒に考えるのは当然の仕事。
お子さんたちも学校を終える時期になると、事務所の仕事を継ぐのかどうか、その意思確認が行われる。税理士になると宣言して、試験に挑戦するも、この難解な試験に合格するまでにはそれなりの月日が必要。
親である先生は、お子さんが資格を取り、後継者になると考え、若い税理士を採用することはしない。ところが、親として、受からないのではないだろうかと不安に。時にはお子さんにつらく当たることも。
そんな親の期待を尻目に、受験勉強にギブアップするお子さんも少なくない。大学などを卒業してから、受験勉強をスタートした場合、自分の事務所に就職させ、一般職員と同等の業務を担当させていることも少なくない。
通常の業務に精通してくると、不思議なことに試験には受からないようになってくる。これはお子さんにしてみれば、一般職員と同じレベルの仕事ができないのは、許されないと考えるようになる。
なかには、仕事は中途半端で、試験勉強にも身が入らないということももちろんある。しかし、息子、娘とちやほやされることに抵抗もあるので、どうしてもプレッシャーに負けてしまうケースも出てくる。
それでもなお、所長さんはじっと、お子さんからの朗報を待つ。しかし、その間に時間だけが過ぎていく。気がついた時には、税理士試験の合格した職員は事務所を離れ、お子さんも受験する意思も失せていることに。
結局、先生が齢を重ねるに従って、事務所も活力を失い、枯れた事務所にもなっていく。それでも、先生の作り上げた事務所の歴史を引き継いでいくことは、もちろん可能。”家業”から脱却することが求められます。
これからは税理士法人に時代。先生も税理士法人の一員になり、自分のお客さんを見捨てずに、税理士法人の若手税理士たちに引き継いでいくのも一計ではないだろうか。後継者を育てられなくても、お客さんは満足できます。
事業承継支援室長
大滝二三男