税理士事務所の将来を考えると、10年以内にはビッグ税理士法人が全国に支店を設け、さながら監査法人の成長期と同じ様相を呈するようになるだろう。
先日お会いした税理士さんも25人ほどの規模で運営しているが、「近い将来、中規模の税理士事務所が合併し、200人規模の税理士法人が次々に誕生するでしょう」と語っていた。
その際、自身の事務所もその中に入り、全国規模の仲間と一緒に業務を展開していこうという計画を持っているという。「私の事務所の規模では、これから経営は一番難しくなるでしょうね」というのが本音。
だが、一対一の合併は、どちらが頭になるかで”権力争い”が生じ、なかなかうまくいかないことは、現実に税理士法人の分裂事例で証明されている。そこで、仲間が多いほうがまとまりやすいともいう。
税理士同士が、それぞれ思いを言い合うのではなく、一歩退いた形で、理念を同じくしていけば、時間はかかっても、ビッグ監査法人のような形にはなり得ると確信しているそうだ。
ただし、これまで”お山の大将”で税理士事務所を思いのまま、一人の考えで運営してきた税理士さんが、果たして組織の一員として機能することができるのだろうかと不安も感じる。でも、これも腹を決めればできること。
さらに今や税理士一人の事務所では、税法の解釈をはじめ、経済状況の把握から、顧問先に対する指導法など多くの不安材料がある中で、税理士法人の経営者の一人となることも時代の要請かもしれない。
税理士会などでは、事務所経営のノウハウなどは一切研究してきていないことは、税理士のほとんどが口にする。「これまで真剣に話あったこともありません」。そろそろ扉を開ける時が来ているようだ。
税理士法人として、数多くの税理士事務所が大同団結するのも、一つの事業承継の形であり、創立者たちが引退する中で、組織で育った税理士たちがその経営を引き継いでいくことになる。
その際、創立者たちは現在行われている事業承継のように、それなりの退職金を手にして、「後は任せた」と安心して引退ができるのが、見えてきているともいう。
これは理想的な事業承継であり、そのノウハウはきっと受け継がれていくに違いない。もう個人事務所の経営法などを研究するまでもないのではないだろうか。
事業承継支援室長
大滝二三男