税理士さんが、事業を他人に委譲しようと決断する際に、一番最初に考えることは果たしてなんだろうか?
もちろん、病気などで日常の業務ができなくなっている時と、健康な時とでは、大きな違いがあります。
年齢を考えると、お客さんも「先生、お体はいかがですか?」と、遠回しに、そろそろ、いいのでは?
ご自身も、「そろそろでは?」と考えるのだが、その時一番最初に去来するものは、果たして何か?
80歳を超えた先生は、「まだまだ仕事はしたいが、お客さんがどう思っているのでしょうね」と率直に言う。
実務は職員任せだが、社長さんたちへの決算説明は同席し、日ごろの業務のチェックは欠かさない。
過去の税理士を雇い、後を任せようとしたが失敗し、今は後継者も育てられなかったことに悔いが残る。
職員には十分な給与を支給してきたので、そろそろ家族や自分のことを優先的に考えたい、という。
若くして兵隊にも志願し、生きて帰り、税理士として50年余。そろそろ、「所長」からの引退を宣言したい。
家族も「もういいでしょう。と言ってくれるので、あとは職員たちのことだけです」と笑って話す。
その職員たちも先生とともに歩み、還暦を迎えた職員も。この人たちが先生とともに引退できるのだろうか。
彼らを引き取ってくれる新しい雇用主・税理士が具合よく、現れるだろうか?先生の心配は続く。
高齢になって、自分より年下で、考え方もはっきりわからないような人を「先生」と呼べるのだろうか。
これが業界の”常識”。老先生がこの人と決めたとしても、たぶん高齢の職員たちは納得しないだろう
老先生がどんなに考え、職員の雇用を守ろうとした承継対策でも、その真意は職員にはわからない。
老所長の決断は、職員には最後の最後まで語られず、すべてが決まったその直後に披露される。
これは一般企業の事業承継を同じ形式だが、人が財産の会計事務所ではそこで一段落とはいかない。
その時は職員たちからの”嵐”が吹き荒れるだろうが、強烈に反対する人ほどすんなり変わるのものも通例。
「案ずるより産むが易し、という格言がぴったりする」とは、事業承継を経験した人の言葉だ。
残された時間を大事にしたいと考える老先生、果たしてどのような結果になるのだろうか?
事業承継支援室長
大滝二三男
でも、100歳の税理士さんが数人いらっしゃいますが、多分、法人の決算などには立ち会わないでしょう。