会計事務所の事業承継では、何件引き継げるかだけが契約時の課題。近い将来、清算や廃業をする顧問先は早めに把握し、契約ではその案件を承継の対価から外す措置が要求されます。
これは、承継先として当然のことですが、顧問先が事業を辞めるかどうかはっきりしない委譲元としては、そう簡単に外すことはできない相談。それでも、承継後すぐに顧問契約を打ち切られては、立場もない。
こんなケースを救うため、当支援室では、承継契約の1年後に契約の見直しを行っています。当初の契約の際にも、現状把握に全力を挙げていますが、この経済状況では何時企業に暗雲が降ってくるかは分かりません。
そのために、承継後の契約の見直し、いわば顧問先の引継ぎ状況を把握し、承継の対価を見直すこととしています。この措置は概ね好評で、委譲元の先生も「引き継げなければしょうがない」と納得されています。
そこで、契約が引き継げなかったり、途中で解除となった顧問先に対して、承継先の事務所がどのような対応をしているのでしょうか。こちらはほとんどしょうがないと、契約解除に応じ、そのまま放置するのが一般的のようだ。
でも、先日も都内の先生から報告があり、承継がうまく行かなかった法人の社長が急死され、相続税の申告を頼まれることになったとのこと。月々の報酬で折り合いが付かず、話し合いも中途半端な状況だったが、急転直下。
社長が急死された遺族にとっても、前の先生も廃業してしまったので、相続税の申告を依頼できるのは、承継先の先生のみになってしまった。その結果、相続税の申告と共に、税務顧問も新たに契約することになったという。
ここがポイント。高齢を理由に廃業をする税理士さんのお客さんも、先生同様に高齢化していることが多い。そこで、承継後に契約ができなくても、年賀状や暑中見舞いのはがきを忘れないことだ。
廃業した税理士さんしか頼るすべのなかった元中小企業経営者にもしものことがあったとき、その1枚のはがきがきっと頼りになるはず。そんな期待をこめて、便りを送り続けること、しかも心をこめて。いかがですか?
事業承継支援室長
大滝二三男