事業承継の相談で、多くの税理士さんの話を聞いてきた。
事務所を閉鎖する原因のひとつに、家族の問題もある。
そう、少子高齢化もあり、さらに核家族化も影を投げ掛けている。
とにかく、今や人口の25%が65歳以上の高齢者。
(自民党の小泉進一郎が代議士が、高齢者と呼ばないと主張。いいね!)
健康だと思っても、体の何処かにガタが来るもの。
また、核家族化で、高齢者夫婦二人だけの家庭も少なくない。
税理士も同じ状況にあり、ある地方の先生から後継者探しの依頼が来た。
依頼主の娘さんは税理士になり、同業者と結婚し、首都圏で開業。
生まれ故郷に戻って、父親の事務所を継ぐ意思はない。
もちろん、認知症になり、彷徨が始まった母親の介護も出来ない。
こうなると、父親の税理士が介護をやらざるを得ない。
発症当初は家から出なかった奥さんも、今は目を離したすきにいなくなる。
鍵を掛けておいたはずの玄関から、裸足で外に出てしまう。
家の中では足を引きずって歩いているのだが、そとではまるで違う。
何故か、若い健康体の時と同じように、すたすたと歩くというのだ。
まさに時速4、5キロで歩くから、探すのも一苦労。
40歳代の未婚の女性職員も、先生と一緒に奥さんを探し回る。
夜にも度々起こる゛逃走劇゛に、先生も疲労の色を濃くする。
事務所の仕事にも差し障りが出るようになり、先生は廃業を決意。
幸い同じ支部の若い税理士に引き継ぐことが、比較的早く出来た。
未婚の職員も承継する新しい事務所に勤務し、これまでの顧問先を担当。
その職員が返事に困るような問題は、先生が出てきて顧客に説明。
承継先の事務所に馴染みの職員が煎るので、顧客離れは最小限になった。
このケースでは事なきを得たが、職員が介護問題を抱えたらどうするか?
身分は正職員からパートに代わり、勤務時間を短縮する。
介護が長期に渡れば、仕事をやめざるを得ないことにもなる。
現実に介護を理由に退職する職員は、どこの事務所にも存在する。
もちろん、介護問題が解決すれば、復職できる事務所もある。
しかし、独り住まいの未婚の職員が発症したら、誰が面倒を見るのか?
現に数年前の話だが、金曜日に病気で休んだ職員が、月曜日は無断欠勤。
その職員のアパートに行ってみると、返事がない。
家主に頼んでドアを開けてもらうと、布団の中で虫の息だった。
こんなことはそう度々あることではないが、これからは分からない。
その解決策としては、独り住まいは止めて、シェアハウスに住む。
短絡的かもしれないが、高齢者にもいいかもしれない。
常に誰かが見守ってくれる体制ができる、家族でなくても良いじゃないか。
そんな体制を大企業が作り、参考としてもらえたら良いのかもしれない。
事業承継支援室長
大滝二三男