実務的に税理士事務所の評価をするとき、個人事務所であれば、先生の所得を基準にして評価をします。
この際、多くの先生が行っている“節税”の問題が生じます。
といいますのも、事務所の評価を上げようと思えば、所得を多くする必要があります。しかし、これまでの慣例から“節税”した結果、所得を少なくしていますので、これは困ったことになります。
合法的な節税であれば良いのですが、時には少々”味付け”をしたものも出てきます。
このようなときに先生から「ね、分かるでしょう?」と言われれば、こちらの”さじ加減”も変わってきます。
とはいうものの、われわれ素人ではそれが脱税であるかどうかは判断できませんので、その判断は先生にお任せします。
次に、評価を下げるのが高コスト体質です。
事務所の歴史があればあるほど、職員の給与の占める割合がどうしても高くなります。地域的にも、首都圏や関西圏などの主要都市では、人材が豊富ですから、職員の移動は頻繁に行われます。
これに対して、地方都市では、税理士事務所は安定した雇用先ですので、職員の転職はそれほど頻繁には行われません。これらの事務所では、年功序列の賃金体系の結果、賃金の占める割合が高くなってしまいます。
弊支援室では、雇用の確保を事務所承継の大きな要件としていますので、職員がこれまでの給与を保証される
こととなり、引き継ぐ相手としては、高い評価をしません。当然、引き継いだ結果赤字では困りものです。
ですから、承継を希望する事務所の経営者としては、高齢化した事務所職員の給与を事前に下げるなどの措置が必要になりますが、これまでの事例でこのような措置を執った先生はほとんど見かけません。
職員の給与を下げるくらいなら、事務所の評価を下げてくれて結構。こういった先生が多いのも事実。同時に先生が辞めるのであれば私も引退しますという職員も出てきます。身を引くのは結構難しいのですがね。
事業承継支援室長
大滝二三男