会計事務所の評価を顧客の立場で行うことは、ほとんど不可能に近い。もちろん、税理士には顧客の個人情報を守る義務があるので、自分から「どこそこがうちのお客さんだ」と明言することは避けなければならない。
芸能人を顧客としている税理士でも、「彼とは十数年お付き合いだよ。いつでも言って、サインもらってあげるよ」。余程近しい人でなければ、こんな話も聞くことはほとんどありません。
芸能人でするこうですから、一般の企業のことを事務所以外の人に話すなんてことはありません。ですから、その事務所を顧客の立場に立って評価することは、外部の人間にはできません。
でも、従業員が他の事務所の職員や税理士に話すことがあります。ほとんど不平不満しか、従業員から他の事務所の関係者には聞こえてこないでしょうから、高評価に繋がるような材料は出てきません。
ただし、取引先の金融機関から事務所の評価を聞くことがあります。それは顧客と金融機関が税理士事務所の話をし、その結果が金融機関の担当者から世間話として、他の事務所関係者に伝えられることがあります。
この話が正鵠を射ていることもありますが、往々にして悪意に満ちた憶測から発生していることもあります。ですから、この話を多くが眉唾物であるようです。
しかし、”火のないところに煙は立たない”ということもあり、漏れ出た情報を信じて、経営数字からの判断だけでなく、世間話から判断する傾向もあります。その結果、「地元の事務所は嫌だ」と敬遠する譲り手も多いのです。
同じ税理士会支部のライバルに事務所を承継してもらうより、自らの情報に詳しくない税理士(税理士法人)に承継してもらったほうが、たとえ評価が低くても、その方がいいと考える所長さんのほうが圧倒的に多い。
従って、事務所の評価はほとんどその経営指標を基に行い、コールにその数値を判断することになります。そこに先生の性格や職員の力を判断して総合的な評価を行います。これが難しいのですね。
事業承継支援室長
大滝二三男