事務所の承継問題を担当しているものにとって、大きな疑問は、税理士さんは投資に対してどのようにお考えなのかという点です。
もちろん、一般の株式などに投資をするということではなく、事務所承継に関して、果たして投資として考えているのかどうかです。
ほとんどの会計事務所の経営は職員の給与、つまり労働分配率をみれば、その事務所の経営効率をみることができます。
労働分配率が50%であれば、危険水域の近づいているものの、今日明日に資金繰りに困ることはないでしょうが、55%を超えると、危険水域入りになります。
とはいっても、個人事務所の経営は職員の給与を低く抑えれば、非常に安定した事務所経営となり、労働分配率が上がってきたら、職員を切るなんて乱暴な経営を行っている所長さんもいらっしゃいます。
そこには、遊軍がいてこその話ですが、顧問先の減少とともに、職員を減らしていくといった、経営努力なしの事務所も多く見受けられます。
事業承継の相手先としては、ほとんど考えられないお相手ですが、そんな経営者ほど、上手に職員対策を講じていることも、皮肉ながらも、事実です。
デモでも、自分で営業努力をせずに、他の事務所をM&Aする税理士さんの考え方には、どうやら投資という考え方はないようです。
つい最近の相談です。「売上1000万円の事務所を500万円で売りたいという先生がいらっしゃるのだが、300万円程度でいいと思いますがどうでしょう?」
よく聞いてきると、引き継げた顧問先の1年間の報酬が1000万円で、お相手の先生の要求が500万円だったというのです。しかも、費用を引いても1年間で500万円の利益が出るというのです。
お人好しの先生もいらっしゃるものだと感心しましたが、1年間で500万円の利益が上がるものに300万円しか支払いたくないという考え方にびっくりです。
お電話でしたので、その先生のお顔を見ることができませんでしたが、1年で投資金額をすべてカバーできる商売などほんの一握り。よほどの商売です。
もちろん、税理士先生方は事務所を経営し始めたころはせいぜい事務所費やパソコン、システムの導入費などしか投資資金を出しませんので、お客さんの投資に関する関する考え方とは大違い。
投資効率を考えることなどほとんどない事務所経営でしたので、一度に数百万円を出すこと自体には抵抗を感じるのでしょうかね。それともケチ!
わかりません。ただ言えることは、事務所を大きくしようとする税理士さんはリスクを考えながらも資金を有効に使う、生きた資金の使い方を知っています。
投資はすべてが成功するというわけではないことも良くご存知です。同業の会計事務所の経営にはそのことがわからない方も多いことも事実ですね。
事業承継支援室長
大滝二三男