「同じ支部は嫌だね」と都会の先生は言います。
「同じ県には適当な人物はいないね」と地方の先生は言います。
「個人は嫌だね。税理士の多い税理士法人がいいね」と地方の有力事務所の先生は言います。
ご自身で作り上げた事務所を赤の他人に承継してもらうわけだが、要望はそれぞれ。
しかし、自分のことをよく知っている人に依頼したくないというのは、どうしてなのか。
税理士同士で、事務所経営に関する話はほとんどしないというのが、税理士業界の常識。
隣の先生と切磋琢磨、いや競争をしてきた間柄で、事務所を承継することはないとはっきりしている。
隣人たちのいい面より、悪い面をきっと見過ぎてきたためだろうか、それとも終生ライバルなのか。
都会であれば、隣の支部でも知らない者同士、会って話してみて、気が合えば、すんなり事が運ぶ。
現に同じ支部でも、承継後4年経っても、先生同士仲が良く、”仲人”の我々も非常に気持ちよく。
前からお互いを知っていたのか、答えはノー。知らない者同士のほうがうまくいくという典型的なケース。
だから、我々も同じ支部ではお相手を探そうとはしない。
「同じ県では適当な人はいない」という方には、交通の便が良ければ、大都会の税理士法人を紹介する。
でも、交通の便が悪ければ、やはりお隣の県の先生を紹介せざるを得ない。
地方の場合、税理士法人は親子関係で設立されているケースが多いので、税理士法人も薦めにくい。
そんなこと言っていたらいつまで経ってもお相手は照会できない。
事実、お相手がいなくて紹介できない事案もある。こんなケースはまず少ないが、”要求”が厳しい場合。
ご自身が要求する内容があまりに自分勝手なこともあるので、当方は慎重にことを運ぶのだが。
中にはいつまで経っても紹介してもらえないと怒れ出す先生もいます。先生の出す条件がきついのです。
こんな事例を今日も戦っています。数年前に承継した事務所からの不平も時には出てきます。
でも、承継が始まって数年たてば、笑い話で済む問題がほとんどです。
昨日も”仲人”をした税理士法人の支店の経営計画発表会に呼ばれました。
ともに歩んでいこうという税理士法人の代表の言葉と真剣な顔に、支店の職員からは笑みも見えていました。
こんな会に出席できることこそ、我々の仕事の醍醐味でもあります。
事業承継支援室長
大滝二三男