ある日、税務署から税務調査の連絡が届いた。それも事務所の特別調査。
思い当たることがない所長・税理士は、当日は早めに出勤。
調査官が到着すると、調査理由の説明が行われた。
これにはビックリの所長。その理由は、所長の脱税容疑というのだ。
というのも、顧問先の調査で職員がお手当てを受け取っていたことが判明。
職員が簿外の手数料を受け取っていたことを、所長が知っていたはず。
しかも、所長が番頭さんがお手当てを受け取っていたことを知っていた。
それも、所長も顧客から同様にお手当てを受け取り、これを除外していた。
それが税務署の特別調査の理由で、徹底した調査が行われた。
所長はこれまでに一切不法行為をしていないので、調査を見守ること。
もちろん、自分でも顧客から゛お手当て゛を受け取ったことはない。
しかも、信頼していた番頭さんが顧客と癒着しているとは、思いもしない。
確かに、顧問先の税務調査で゛お手当て゛が支払われていたことが判明。
番頭さんもその事実を認めていたわけで、当局はここぞと所長をチェック。
所長の番頭さんに対する怒りはあったが、まずは調査に全面協力。
お金の出し入れを確認できる書類はすべて提出、隠すものは一切なし。
その結果、所長の不正は一切なく、番頭さんの一人相撲。
他の事務所に比べて給料は高い方なのだが、魔が差したのだろう。
所長はそれを奇禍として、複数による担当制を採用。
前日の業務報告を毎朝確認、職員全員が各人の業務を確認することに。
不正を行った番頭さんは当然辞職した。
共に成長してきたと信頼していただけに、所長は疑心暗鬼にもなった。
しかし、その状態から一日も早く脱却し、お客さんの信頼に応えたい。
それが一番の課題と職員と共に対応、あれから3年、今や地域一番店。
そして、職員の給与水準も他を圧倒している、そんな事務所に出来た。
災い転じて福となる、そんな言葉がぴったりする事例でもある。
事業承継では、本当に隠れた事実を知ることになります。
事業承継支援室長
大滝二三男