これまでの経験から、売上の半分近くを一顧客が占めている例は無い。
承継時に一グループのお客さんで25%を占め、承継者は大変苦労した。
このグループは、地元でも超有力企業グループ。
関与税理士はこのグループの顧問として、共に成長してきた。
実際に事務所の職員が週に2度訪問し、総務の全てを担当している。
税理士事務所の職務を越えた業務を行い、企業の裏方をこなしてきた。
これまでに、この優良企業に営業をかける地元の事務所も少なくなかった。
しかも、事業承継すると分かった時点で、その勢いは増していった。
オーナーの趣味も知れ渡っていたので、プレゼント攻勢も続いた。
そんな中で、承継者も担当者を変えることもなく、サービスを継続。
代えるどころか、資格を持たない担当者を副所長に格上げした。
経営会議にも出席する職員の出世に、企業のオーナーも承継者を評価。
コツコツ仕事を続けてきた職員も士気が上がり、顧問契約も継続。
地元の同業者たちは歯軋りしながら、諦めるしかなかった。
この企業グループが顧問契約を破棄すれば、承継は大失敗に終わるところ。
というのもこのグループがいるからこそ、事務所の利益が出ている。
それがなくなれば、事務所も規模を縮小せざるを得ず、職員も退職へ。
しかし、幸いにもそれが避けられ、承継後5年の今も隆盛を誇っている。
この事例を除くと、顧問先1件で、事務所売上の20%を超えるのは危険。
税理士と顧問先の代表者との関係で、契約が維持できているのが普通。
もしも、税理士がいなければ、契約を破棄するという顧問先もある。
その企業からの顧問料が全売上の50%を超えると、承継候補者も躊躇する。
顧問先から所長交代を理由に契約解除となれば、対価も払えない。
当然瑕疵担保契約があるとしても、数年間はビクビクもの。
対価を償却できたとしても、利益を計上までには相当期間がかかる。
旧所長が病気などで短期に退場してしまえば、契約解除も早まる可能性も。
その企業からの顧問料が他のお客より高かったら、目も当てられない。
残った顧客からの顧問料収入では、事務所経営の収益は見込めなくなる。
この例は全くのレアケースだが、やはり売上割合を下げるしかない。
対価を大幅に下げるのも一案だが、果たして譲り手は了解できるだろうか?
それでもリスクは残り、承継者は一歩を踏み出しにくい。
良い企業を顧問先に持っているのだが、はて承継者は出てくるだろうか?
事業承継支援室長
大滝二三男