事業承継の一つの問題が、経営を他人に譲った時の家族従業員の問題です。
どうしても家族であれば、他人の従業員に比べて待遇はよくなります。
能力以上の給与を支払うのは、暗黙の了解事項です。
これは中小零細企業ばかりか、上場企業のオーナーでも同じではないでしょうか。
D製紙のバカ会長がギャンブルに狂い、百数十億円を関連企業から出させ、大損をさせたように。
でも、税理士事務所の経営を他人に譲った途端、それ以前と同様の待遇を得るのは大変です。
というのも、甘やかされて仕事をしてきた人たちが、他の従業員と同じ立場に立つことなるからです。
当初は譲り渡しの先生の家族ということで、少々目をつぶられることはあるでしょう。
しかし、承継の対価などを支払い、たん職員と同等の立場で評価をされた時に、評価はどうなるでしょう。
仕事も他の職員以上にできるのであれば、譲り渡した先生の家族ということで大いに歓迎されるでしょう。
しかし、その逆であれば、うっとうしい職員としての評価から、いつかは淘汰されることも想像できます。
親としてはそうなるであろうかことは頭でわかっていても、現実には想像もしたくないことでもあります。
そこで承継者に無理を言って、「おねがい」をすることになりますが、それも時間が解決してしまいます。
「どうかお引き取りください」といった冷たい”宣言”が伝えられる事にもなります。
それでは、そうならないようにするにはどうすべきなのでしょう。
答えは簡単です。
一般の従業員以上に仕事ができるようにする。もしそうでない場合には、先生とともに職を外れる。
退職することにより、他の職場を探すとなると、これまた大変です。
40歳を超え、資格があっても税理士事務所は大変なのに、資格がなければなお大変。
事実上、会計事務所の職を求めるのはほとんど不可能でしょう。
まさに転職、それも体力勝負の仕事、それもほとんど可能性はないに等しいでしょう。
自民党が政権を奪取した現在でも、急激に経済を良くすることなどできようはずがありません。
不況業種指定の税理士事務所の職員として生き残るのは、本当に厳しい状況を迎えています。
でも、製造業のように海外に出ていくことはできませんので、経営はますます厳しくなるでしょう。
そんな中で家族経営を継続することは、危険がいっぱいという状況になります。
生活を賭けない従業員であれば一番いいでしょうね。
事業承継支援室長
大滝二三男