税理士事務所の事業承継でよく問題になるのが、顧客離れ。
事業承継のスタートは、顧問先に経営統合などを告知すること。
個人から法人成りするケースが多いので、顧問先の理解も早い。
その際、税理士と一緒に職員も移る場合は、混乱も少ない。
とは言うものの、事業承継ゆえに先生の出番は少なくなる。
担当の税理士も承継先から出張ってくることも、当然多くなる。
こうなると、代わりに来るようになる税理士との相性の問題に。
先生が代わり、新しい先生には話が通じない、といったことも出てくる。
そのうちコミュニケーションが取れなくなり、契約解除にもなる。
この場合、どちらに責任があるのか、ということで揉めることもある。
というのも、顧客離れによって、評価を見直す条項をある。
これが行われると、承継の対価が再査定されて、減額されることになる。
実際、新しい先生が顧問先に受け入れられず、顧客離れが起こった。
その責任をもとの先生が問われて、評価を下げられるのは理解できない。
これはもっともな話だが、ここで別れ話にするわけにはいかない。
弊社の仲介案件で、この契約条項があっても、実際に評価を下げた例はまれ。
しかも、通常顧客離れは数%しかなく、清算・廃業の件数より少ない。
ただ、大幅に顧客が減ったのは、職員が退職し、゛持ち逃げ゛したケース。
これは先生の管理・監督不足が原因だから、責任は譲った側にある。
新たな担当者との相性については、問題があれば、担当者を代えて対応する。
その誠意が伝われば、顧問先は離れるエネルギー等使いたくないと残る。
従って、このどちらに責任があるという議論は、現場では起こってこない。
契約の検討段階で論じられるのがほとんどだが、゛転ばぬ先の杖゛。
実際に起こってしまったときに、検討する条項がなければ、大変なことに。
これまでのほとんどないのは事実だが、明日は分かりませんからね。
それに引き渡す先生には一生に一度のこと、慎重過ぎることはありません。
事業承継支援室長
大滝二三男