国税職員の退官時には、顧問先を紹介する制度(斡旋)が廃止されて5年。
このため、退官後ただちに税理士を開業する人は、めっきり減った。
税務職で最高の特1のランクにたどり着いた人でも、再雇用されている。
この制度では、給与は現役時代の5割程度で、調査官の位置付け。
署長経験者が、それまでの部下の゛支配下゛に置かれることになる。
これは民間企業と同様だが、特1経験者には特官クラスの職制を新設。
特1職員まで再雇用されるとは、斡旋制度廃止の思わぬ余波だった。
このように多くの職員が税理士の道を諦め、嘱託人生を選んでいる。
すでに開業している税理士にとっては、競争相手が増えないのは有難い。
なお、実際には国税出身の税理士は、対税務署担当が主な仕事。
斡旋された顧問先でも、実務は他の税理士に依頼。
というのも、斡旋期間が2年間で、期間終了後は次のOBにバトンタッチ。
実務の継続を考えると、会計業務を担当してもらう訳にはいかない。
いわば、対税務署の2階建ての税理士という立ち位置になる。
このような税理士を雇用できる企業も、停滞していた経済状況では減少。
署長経験者の行き先を探す税務署の後輩たちも、大苦戦を強いられていた。
それだけに斡旋制度の廃止は、現役の職員にも゛朗報゛であった。
しかし、自らの行く道を閉ざす結果にもなっていたわけだ。
もちろん、そんな状況でも税理士登録する人はいる。
その活躍の場も実は広がっている。
現役時代に審理関係を担当した゛専門家゛を求める、同業者が増えたのだ。
税法が毎年改正され、通達などにも精通するのは、並大抵のことではない。
税務の専門家である税理士だが、すべての税法に精通した人はない?
そのウイークポイントをフォローするのが、実はOB税理士。
中規模簿以上の税理士法人では、複雑な申告を扱うことも増えている。
その内容を当局の立場からチェックできる専門家は、転ばぬ先の杖的存在。
なかには法人の職員になっている人もいるが、顧問契約をしている人も多い。
また、税務調査の担当として、旧職場の後輩たちとやり合うOB税理士も。
これらの税理士と顧問契約をしている税理士法人も、大助かり。
自分達が思い付かない対応も出来るので、税務調査もクリアしているという。
長年調査に明け暮れた経験が、今まさに活かされているというわけだ。
OB税理士の登録は減っているが、゛腕に覚えのある゛OBには、期待大だ。
同時に事務所の後継者として雇用する税理士も、少なくない。
それも税務署に紹介を依頼するケースが、圧倒的に多いのも事実。
同時に承継問題で争いが起きることも少なくないのは、どうしたことだろう。
事業承継支援室長
大滝二三男