税理士が赤字で苦労しているという話は、あまり聞かない。
設備投資がそれほど必要がなく、経営者にとっては"良い商売"。
税理士自らが重要な"商品"で、自分を磨ければ、売上げもアップ。
その磨き方は人それぞれだが、客商売であることをまず確認する。
その上で客にあった会計と税務のサービスを提供する。
しかし、単純な事務処理では、客の期待は満たされない。
そのため、会計が示す顧問先の問題点を把握し、経営をサポートする。
なかには、顧問先の専門的な業務にも目を光らせる税理士もいる。
毎年の税制改正はもちろんのこと、他の法律改正もチェック。
専門分野で経営に役立つ改正があれば、すぐに顧問先に情報提供。
実際に農業法人が新設されると、設立から運営まで指導する。
ネットで販売する商品までも作り上げる指導を実施。
その結果、農業法人に参加した農家の収入が、倍増した例もある。
そこまでいかなくても、各業種の経営指標などを基に参考意見を提供する。
職員がこれらのサービスが提供できるように、教育を徹底する。
それだけに、税理士自身に要求される指導力は、重要度を増している。
しかし、ここまで実際に行っているのは、成長段階にある事務所。
円熟した事務所では、顧問料収入のみで満足しているのが普通。
余計なことをしなくても、事務所は可もなし不可もなく回っていく。
このような事務所では、経営を担当する税理士は、所長一人で十分。
難しい税法を職員に教えるのも、自分だけで良いと考える。
そう、「先生と呼ばれるのは私だけ!」と決まっているわけだ。
こうなると、職員が資格を取っても、"先生"にはなれないし、しない。
それとなく独立を進められ、暖簾分けもなく、放り出される。
これで所長の立場は安泰、何時まで経っても、先生は一人。
気がついたときには、所長が歳を重ね、後ろを見ても後継者はいない。
職員からも、もしものことがあったらどうなるのと、不安も出る。
これには、所長も慌てて後継候補者探しを始めるが、見つからない。
というより、見つけない。候補者の話があっても、ダメを押し続ける。
税理士が二人働ける規模まで事務所を拡大しなかった。
後継者がいないのではなく、後継者を作らなかったわけだ。
その結果、職員も離れて行き、極端な場合、所長一人になってしまう。
こうなると、新しい職員を教育する熱意もなくなり、廃業も考える。
そこで、顧問先を守るために行動に移すが、同業者には世間話程度。
やはり、仲間には話しづらく、本気の先生は仲介者に依頼することに。
顧問先と職員を守る、早い段階で動けば、条件は良くなるのだが、、
事業承継支援室長
大滝二三男