国際的にみて、監査法人が顧客の税務を見ることができない国は日本だけ?
日本企業の多くが進出している香港や中国では、公認会計士でなければ税務監査はできない。
従って、中国に進出してる企業の税務は、現地では中国の会計士が署名をしなければ申告ができない。
もっとも、日本の税理士と同じような業務を行っているのは、中国税務当局の役人OBがほとんど。
彼らは税務当局との太いパイプを活かして、仕事をこなすので、会計士とはまた違った”集団”。
公認会計士の場合は、国際的に相互承認制を取っている国が多いので、日本公認会計士も中国ではOK。
とは言っても、当局の承認が必要であることも、これまた当然のこと。
海外では、日本の税理士の権限は一切認められず、国際的に承認されることもほとんどない。
日本の歳入を確保するために、国が認めた資格が税理士であり、公認会計士は企業の会計監査が仕事。
国際的には、公正な監査が行われた会計を基に税務処理を行うので、会計士が税務を同時に担当する。
もちろん、日本でも公認会計士が税理士登録をして、税務の仕事をすることは妨げてはいない。
とはいうものの、あくまでも税理士としての業務をこなしているので、会計士としての仕事ではない。
本来、その垣根がないはずなのだが、歴史的に業務の壁を作り上げてしまっているのも、業界のため。
公認会計士業界から、税理士登録しなければ税務の仕事ができないのは、おかしいという声はある。
しかし、それらの声は税理士の”大声”で、簡単に跳ね返されてきた経緯もある。
国税OBが半数以上を確保している現状では、国際的な”慣習”を日本に持ち込むことは困難だろう。
とはいっても、大手企業は今や、海外で活躍する企業がほとんど。税金も国外で納税することも多い。
そんな企業の税務を見ているのは、ほとんどが公認会計士であり、監査法人系の税理士法人。
そこには、町場の税理士が活躍する場はない。
いつかは日本でも公認会計士のみならず、資格なきプロが税務申告を有償でこなす時代も来る。
業界自体が、記帳代行に重きを置く業務から脱皮しないと、時代の要求に応えられないことにもなる。
監査法人が税務を担当しても結構。税理士はより中小零細企業の実態を知っているのだから。どうだろう。
事業承継支援室長
大滝二三男