税理士事務所が゛家業゛であるというのは、常識はずれではない。
税理士法人でも家の事業として、後継者を決めている事例も多い。
しかし、資格ビジネスだけに誰でも継げるわけではない。
法科と会計の大学院2ヶ所を修業すれば、無条件で資格がとれた。
そんな時代が続き、ダブルマスターは使えないという゛評判゛が出た。
そのため、ダブルマスターの税理士の就職は、難しくなっていた。
その一方、この制度を多くの税理士ジュニア達が利用し、資格を取得。
実務は親が数十年の経験を元に、しっかり教え込むことができる。
他人の税理士であればわかって当然と、仕事を教えることはない。
しかも、自分にもしものことがあれば、家族の生活もジュニアが守れる。
そんなわけで、受験に時間をかけるより、大学院が選ばれた。
事務所を子弟に継がせたいというのは、企業経営者と同じ考え。
娘さんを大学院に行かせ、資格を取得後、婿さん探しをする親御さんもいる。
ともかく、゛家業゛を継がせたいわけで、その便法のひとつが大学院。
実際に少子化の進むなかで、税理士養成の大学院も急増し、今や全国にある。
しかし、今は無条件でダブルマスターに資格を付与する制度はなくなった。
会計と税法の各一科目を試験合格が、ダブルマスターの資格取得条件に。
実際にダブルマスターでも試験に受からず、税理士を諦める子弟もいる。
今回相談に来られた先生は、お子さんが試験に受からなかったとのこと。
よーく訊いてみると、大学院2つを終えているが、試験は受からない。
年齢も50代後半で、試験勉強を続ける気力もなくなっているという。
そこで先生が目をつけたのが大学、それも商学部に通う孫。
学年も3年ということで、就職も考えなければならない年齢。
それとなく進路を訊いてみると、サラリーマン志望で大企業を目指すという。
後継者に悩む先生は、自宅に来た孫に「事務所を継がないか?」と、訊いた。
その答えは、「親父がダメだったんだから、継がないよ」ととりつく島なし。
今さら試験勉強をする気もないし、大学院なんてもっての他という。
事務所を卒業していった税理士に、事務所を渡すという考えはない。
後継者を自分で探す気力もなくなり、やむなく支援室に相談に来られた。
色々悩むこともあるが、家族で継ぐ人がいない以上、結論はひとつ。
孫が就職したら事務所を譲ると決め、その準備を進める。
今年中には承継相手を決め、来年早々引き継ぎをスタートする。
孫に背中を押される形で、腹を決め承継策を模索する。
家族を守り続けた゛家業゛から卒業するまで2年、これからが大変だ!
事業承継支援室長
大滝二三男