税理士事務所は、法人制度ができて15年だが、個人経営がいまだに圧倒的に多い。
税理士によって顧客のレベルは、それぞれ異なっている。
つまり、事業所得者を含め小規模零細企業しか、お客にしないという税理士もいる。
小うるさい社長が経営する成長型の企業は、御免だというわけだ。
自分のやり方を素直に受け入れてくれる人しか、お客には取らない。
経営判断などは社長がすべきことで、税務を預かる税理士には無関係。
というのは極端だが、厄介な問題には首を突っ込みたくないというのが本音。
記帳代行と税務申告以外はやらないということで、顧問料も割安となっている。
そうなると、いざ事業承継をしようとしても、引き受け手が首をひねるほどの顧問料。
従業員の給与も生産性を意識したことがないから、個人別売り上げも平均を下回る。
通常、従業員一人あたりの売り上げは、800万円から1000万円であれば合格。
ところが、意識の低い事務所では、この売り上げも500万円といったところもある。
これでは給料が安いとはいえ、労働分配率は50%を超え、事務所の経営も安泰にはならない。
そんな事務所を引き受けようとすると、個人別の売り上げをアップさせる必要が出てくる。
果たしてこれができるのだろうか?
その可能性を見つけられなければ、コスト倒れでアウト。
引き受けたものの、承継する前と同じ経営状態が続くようでは、承継の意味がない。
そこで、従業員の教育を改めて行う必要が出てくる。
はたして、承継前の先生の”教え”を捨て去り、新たな業務の進め方を受け入れられるだろうか。
受け入れられなければ、事務所内に居場所がなくなり、”退陣”をせざるを得なくなる。
従業員にとってはかなりのストレスとなるわけだが、これを克服しなければならない。
そんな状態にしたのは、承継前の経営者の責任。楽あれば苦ありの典型。
承継した経営者も、短兵急にレベルアップを要求することはないだろう。
しかし、いつまでも待っているわけではない。
長くても1年、おおよそ半年くらいでこれをクリアしなければ、いけないだろう。
そんな風に職員を教育できなかった税理士の責任は重大だが、仕方がない。
新しい組織がその責任を追及するのではなく、職員のレベルアップに尽力する。
その結果、承継された事務所の職員も士気も向上し、新たな仕事場に生きがいも出てくる。
これからはますます事業承継が増えてくるだろうから、この問題は必ず克服しなければならない。
先生、事前にこれくらいのことを職員には話しておいたほうがいいかもしれませんね。
事業承継支援室長
大滝二三男