息子さんが資格を取得し、父親の税理士も一安心。
父親の背中を見ながら育った息子が後継者になって、夫婦も大満足。
お客さんにも、「お陰さまで、息子が継いでくれることになりました。」
顧問先からも「息子さんに継いでもらえるので、安心!」と言われてきた。
そんな日々が続いていたのだが、力をつけてきた息子の態度が変わってきた。
それも資格取得後に結婚。孫が生まれた頃から、一言多くなってきた。
「親父が事務所を始めた時代と今は違うんだ!昔の話は聞きたくない。」
顧問先のほとんどが父親が営業したもの。息子の客は一件もない。
それでも、時が来れば自分の事務所になると、当然考えている。
まさに、「俺がいなければ、この事務所は無くなる。」とでも言いかねない。
そんな姿を見てきた父親は、もう息子の言いたい放題は許せない。
「お前がこの事務所を継ぎたくないのであれば、辞めても良い。」
ついに、父親を否定するような言動をする息子に、我慢も限界。
これを聞いた息子はキレた。「辞めてやるよ。後で後悔するなよ!」
嫁と孫を連れて息子は、嫁の実家もある東京に去っていった。
残された夫婦には後継者がいなくなったが、なぜか気分は爽快。
無理に息子を税理士にさせたのが、失敗だったかもしれない。
大学受験を含め勉強の連続で、情けが分からないから子供を育ててしまった。
そんな反省をする日々は続いていたのだが、ある日息子から連絡が!
それは自分のいたらなさを反省する内容で、もとに戻りたいという。
「女房にお父さんが正しいと言われ続けたのだが、当時は分からなかった。」
親父さんが作り上げた事務所を継げることこそ、息子の仕事。
お客さんもそれを喜んでくれる。そんな幸せは誰もが経験できるものではない。
父親も母親も、実は嫁さんが東京に戻りたいため息子を言いくるめたと考えた。
とんでもないことで、誠にできた嫁さんだった。
でも、やはり血は水よりも濃く、息子も嫁さんの意見を素直に聞けた。
両親が大事にしてきたお客さんにも、改めて後継者宣言ができた。
こんな事例もあるんですよ。
他人への承継相談だけを専門にしているわけではないのです。
事業承継支援室長
大滝二三男