高齢の税理士が引退に際し、番頭さんにその決意を伝えます。
誰よりも自分に話してくれたことに、番頭さんも満足しているはず。
そんな思いを胸に、承継候補者とのテーブルにつき、話は順調に。
事業を承継する税理士としては、番頭さんはなくてはならない存在。
渡す先生も、番頭さんが一番重要であることを、しつこいほど強調。
重要な顧問先を担当させ、それゆえ、給料も誰よりも高給を与えている。
それだけに、番頭さんがいなくなると、事務所は立ち居かなくなることもある。
引き受け手としては、先生の番頭は辞めないという話を信じるしかない。
しかし、交渉中に番頭さんは辞めるとの決意を告げたという。
それに慌てた先生は、自分の顧問として雇うという奇手を編み出した。
彼がいれば、業務はスムーズに展開すると考えたという。
しかし、業務の引き継ぎの終わらないうちに、番頭は事務所を去った。
その結果、彼の担当していた顧問先からの契約解除の通知が舞い込む。
お客は持っていかないという誓約は、見事に破られた。
番頭と顧客との関係に、先生が立ち入る隙はなくなっていたわけだ。
お客さんは税理士法など分からないから、番頭を支持するのは当然のこと。
そうさせた先生が一番悪いわけで、ここまで来たら先生の負け。
裁判に訴え、時間とお金をかけても、その見返りは果たしていかに?
こんな状況を作ってしまった先生は、非常に悲しい思いだろう。
でも、職員の日頃の行動などを把握できなかったこと、監督不行き届き。
事業承継の大舞台で、こんな悲劇が起きないようにしたいものです。
事業承継支援室長
大滝二三男