長年苦労して作り上げた自分の城(事務所)を明け渡すことは、そう簡単にできることではない。
同業者を事業承継者と指名できる人は、どれだけいるだろうか?
皆が皆、一国一城の主であり、事務所の中身を公開している税理士は数少ない。
職員が10人未満の事務所の所長さんたちが、事務所経営に関する話し合う姿はほとんどない。
それも経営に関する数字を明らかにして話すことは、一部のごく少数の研修グループのみ。
一般的には、税理士会の支部の会合等でも、一切話されない最大のテーマ。
誰もが知りたいことなのだが、自らの事務所の中身を話すことは、”絶対に”ない。
一部の若手税理士などが面白半分で話すことはあっても、真剣な意見交換などは聞けない。
言ってみれば、アンタッチャブルの話題なのかもしれない。
事業承継を考えた時、自ら候補者を指名することがないので、他人に紹介してもらうしかない。
紹介者のことを考えると、一度紹介された後継者候補にダメ出しをすることも慎重になる。
「相性が悪いからお断りします」。その一言で話は済んでしまうのだが、それも言いにくい。
そこで、「しばらく一緒にやってみて、問題がなければ、お任せしましょう」
そうなればいいのだが、その後にまたダメ出しをすれば、紹介者も次の候補者を薦めにくい。
一度で済めばいいのだが、第三者がそこに入っていなければ、話は進まない。
ダメ出しも仲介者にさせれば、紹介者との間で角もたたない。
しかし、業務提携をしたからといって、具体的にどのようなことをすればいいのだろうか。
一事務所でできることを提携先の事務所と、共同で処理するメリットはあるのだろうか?
監査業務のように共同で作業を行う仕事と異なるだけに、業務提携の中身も難しい。
先進事務所の効率的な事務処理を習得するための提携であればいいのだが。
なかなか自分の事務所に落とし込んで、効率的な処理ができるのだろうか?
その結果、事業承継されたときにスムーズに一般職員の業務展開ができれば、大成功。
そこでもたもたしているうちに、「うちの事務所の相手ではないので、提携を解消しよう。」
そんな事態になるのであれば、最初から提携などしなければよかった。
どうも、税理士事務所の業務提携はそんな形が見え隠れするのだが、果たして、、、
事業承継支援室長
大滝二三男