病気などで長期入院が必要な場合、税理士はどのように対処するのでしょうか?
当然入院中であっても、携帯電話やパソコンを通じて職員に指示は出せます。
職員が取扱いに疑問が生じ、先生の判断が必要であれば、それもITを使えば、可能です。
直接署名が必要なものであれば、入院先でサインをすることもできるでしょう。
しかし、それができないような重篤の場合、果たしてその対応は様々です。
父親の税理士が復帰が不可能で、意識もないという状態が続いている時はどうでしょう。
かつて、脳梗塞を発症し、寝たきりになった先生のご家族から相談を受けたことがあります。
当初は復帰するとの願いもありましたが、数か月過ぎたころに言葉も出なくなってきました。
そんなときに税務署からの調査が入り、総務課長から承継を考えるよう、”指導”がありました。
毎日世話をしている家族の皆さんとは意思の疎通はできるのですが、他人には理解できません。
当然、業務は一切できませんので、その間は税理士不在の事務所となっていました。
息子さんが副所長として実務を司り、通常業務は滞りなく行われていました。
電子申告を採用していた事務所ですので、先生の署名は必要なく、先生のカードを入れて申告。
しかし、責任者不在を痛感していた副所長さんから、税務署の指導後に早速相談。
職員の皆さんも不安を感じていた時だけに、だれもが承継に関しては大賛成。
結果的に対応が早く、(まあ、数か月は仕方ありません)、名義借りなどの不正はありませんでした。
法人の支店として事務所も従来通りのサービスが提供できるようになり、お客さんも一安心。
こんなに簡単に書いていますが、実はご家族の中では様々な問題がありました。
父親の事務所を譲り渡すのなら、その対価の一部を”相続財産”として渡せと強要されたりもしました。
しかし、事務所を存続させるのには、所長の家族が残っている方がいいに決まっています。
外に出てしまった兄弟から”相続財産”を分けろと言われても、それは事務所を存続させる人のもの。
大枚を手にするというより雇用を守ってもらうことで、給料がこれまで同様に入ることが重要。
仕事が無くなれば、家族が路頭に迷うので、必死で兄弟を説得。しかし、中には納得しない兄弟も。
先生も承継後まもなく死去されたが、その兄弟は葬式にも顔を出さず、縁切り状態が続いている。
事務所に残った兄弟は、今は法人の支店の重鎮として、父親のお客さんたちを守り続けている。
このような事例とは真逆で、税理士を”雇う形”で、会計法人を継続しているケースもある。
これなどは名義貸しという判定が下るだろうが、雇われ税理士だけが罰せられるのだろうか?
まだまだ多い、名義貸しの原因は、”家業”から脱することのできない、税理士遺族に問題あり。
事業承継支援室長
大滝二三男