商業高校を卒業して、税理士事務所の就職。その後、結婚し、子供も生まれた。
税理士さん、所長家族とも主従関係はあるものの、家族でお付き合い。
それというのも、仲人は所長夫妻、生まれた娘さんの名付け親も所長先生。
娘さんが大学に入り、その後二つの大学院に学んだ時も所長が保証人になった。
その間、地道に働く職員は、事務所の番頭さん役を務める実力者に。
仲人であり、娘の名付け親、そして保証人にもなってくれた所長さんには頭があがらない。
そんな番頭さんも実のところ、いつかは自分の事務所を作りたいという野心が芽生えた。
その表れが、娘を大学院に行かせること。
今では、会計、そして税法と二つの大学院に行っても、それぞれ一科目づつ試験合格が義務付けられている。
そう、ダブルマスターで、即税理士登録はもう数年前に廃止となっているのだが。
この話の主人公は、まだこのダブルマスター制度が生きていた時に話。
番頭さんは、自分では試験挑戦も3科目合格で諦めたが、娘をどうしても税理士にしたかった。
そこで、ダブルマスター制度を利用し、思惑通り、娘を税理士にすることができた。
娘さんの名付け親である先生は、大学院に行くと聞いて大喜び、資格を取った時もお祝いをした。
この娘さんが事務所を継いでくれれば、本当にいいと先生も納得していたのだが。
娘さんが資格登録した数日後、番頭さんは事務所を辞めた。
その時、自分が担当していたお客さんをすべて娘の事務所に”強制連行”。
なんと、仲人であり、娘の名付け親であり、そして学校の保証人であった先生を裏切ったわけだ。
当然この話は、裏切られた先生からの話なので、実のところは正確にはわからない。
ただし、番頭さん担当のお客さんからの顧問料収入約2000万円がなくなったことは、事実のようだ。
この裏には、長年虐げられた人の思いがあるような気がしてならない。
「いつか見ていろ、俺だって!」そんなことを実現したのではないだろうか。
この話を先生の奥さんからお聞きしてすでに5年を経過。
番頭さん親子の事務所が繁盛しているかどうか、定かではない。
先生の事務所は勤務税理士が引き継ぎ、今でも地元では評判のいい事務所として存続している。
本当にさまざまな事例があるものですね。
胸が痛くなる、頭もいたくなる話は本当に多い。これが事業承継仲介業務の本当です。
事業承継支援室長
大滝二三男