所長がそろそろ事務所を閉鎖しようと言ったとき、職員の生活まで考えているのだろうか?
10年前であったら、税理士事務所の業務に精通していると人であれば、就職先もあった。
お客さんもつれてこれるだろうと、スケベ根性で受け入れた税理士もいたであろう。
しかし、今はどうだろう。
所長が事務所を閉じると言った場合、自分たちの職場がなくなると、反対するだろう。
「先生、元気なうちは我々が頑張りますから、どうか続けてください」と要請するかもしれない。
先生にとってはうれしいことだろうが、果たして税理士としての責任は全うできるのだろうか。
ご自身でもう税法改正などについていけない、新しい通達なども頭に入らない、と悩む。
職員の前では、はっきりと言えないが、職員の方がそこは理解している。
責任は所長が取るのだから、自分たちには責任は及ばない。
でも、所長が辞めてしまったら、自分たちの職場はなくなるから、何とか説得しよう。
職員も若く、会計及び税務書類の作成等に自信があれば、行く先も見えてくる。
それでも今は、事務所自体の経営が苦しくなっているので、どこでも行けるというわけではない。
ぬるま湯に浸かっていた職員であれば、それこそ厳しい状況を見せつけられるだろう。
同時に、中年の職員にはそれこそ”地獄”が待っている、そんな状況もある。
事務所を承継してもらいたいという先生にとっても、ここ数年の条件は非常に厳しくなってる。
考える以上に、その可能性も狭くなっているというのも現状だろう。
特に今年に入ってからは、引き受ける側からの条件がかなり厳しいものになってきている。
引き渡す側の事務所経営の実態を正確に把握し、より厳しい条件を提示する。
顧客が増えないのだから、そうなるのは当然のこと。
古いお客さんからは新しい顧客を獲得できる可能性がかなり低いため、そうならざるを得ない。
それにしても、アベノミクストと浮かれたことを言っていていいのか。
税理士事務所の経営は、これからますますシビアな状況に向かっていく。
こうなると、事業承継を考える先生、そしてその職員にとっても、厳しい選択を迫られそうだ。
事業承継支援室長
大滝二三男