承継の形はいろいろあると書いてきましたが、ここにきてすさまじい事例を紹介しましょう。
80歳を超えた先生の事務所では、40代の職員が7名で、業務を進めていました。
先生は病気がちなこともあって、ここ10数年は顧客相手の仕事は、職員任せ。
個人事務所ですから、顧問先担当者の仕事は、事務所職員はだれも知りません。
顧問先からどのような要望が来ているかなど、知るよしもありません。
単純に、顧問先からの毎月の顧問料が入っていれば、先生も文句を言いません。
先生は職員任せですから、毎月のお金がつかめていれば、それで良し。
そんな状態が長く続いていた昨年、先生が入院し、事務所の業務をチェックすることが不可能に。
こうなった時の職員は、「俺たちが先生を食わしてきたんだ」と、事務所内でも言うようになった。
職員の中で税理士試験4科目を持つ者が、その先兵。
先生にはこれまでにかなり儲けさせたんだから、今後はとやかく言わせない、と主張。
たまたま、そこの事業承継の話が進んでいたことは、職員には知らされていなかった。
そんな状況で、先生は急死。承継の相手となっていた先生も戸惑うばかり。
そこで、先生の遺族と話を進めていた、40代の明日にでも試験に受かるという職員が異議を。
自分が合格すれば、先生は事業を譲ると言っていたと声高に主張。
しかし、資格がないので、そのままの状態では,事務所は成立しない。
そこで、承継者との調整に入ったのだが、職員は言う「俺たちが先生を食わせてきた。」
だから、自分たちの立場をそのまま維持するのであれば、顧客を説得しましょう。
どうでしょう。こんな状態の事務所を引き受けることができますか?
でも、高齢の先生の「事務所では、こんな状況は実に多いのです。
しかし、「俺たちが先生を食わしている」なんていうことは、表には出ませんがね。
実は多いのです。税理士法人を理解されていない先生には、いい話のはずですがね。
事業承継支援室長
大滝二三男