税理士同士、事務所経営の話はしたがらない、これ常識。
いつもは支部の会合で親しく語り合い、酒に、ゴルフに、カラオケにと仲の良い間柄。
「そろそろ俺も年だから、うちの事務所やってくれないかな」なんて言う会話は日常茶飯事。
それを言われた若手の先生は、今か今かと持ちわびるのだが、そこから話が進まない。
中にはとんでもない話もある。
というのも、不治の病に侵された老先生が、後輩の事務所を訪れた。
その際、老先生は、「もしものことがあったら頼むよ」と、何気ない一言。
言われた先生、「まさかの時はお任せください」と、返しはしたが、社交辞令とも思っていた。
その後、老先生からの話は一切なく、一年が経過しようとしたある日。
老先生の奥さんが、訪ねてきた。いわく、「主人が自分が死んだら、先生が面倒見てくれるから」
何のことやら、狐につままれた感じの先生。
奥さんから耳を疑う言葉が、「事務所を引き継いでもらえるから、毎月20万円の生活費をくれるはず」
ここまで来ると唖然茫然。しかし、老先生のことを考えると、頷かざるを得なかったという。
その事務所の評価は1千万円程度。5年も習えば御の字のはず。
しかし、話をうかがった時でも、10年は経過し、その際も継続して払っているという。
受け継いだ顧問先のほとんどが零細の企業などで、その時点ではほとんど残っていなかった。
こんな話もあるんですね。同じ支部に属している先生同士では。
でも、これは例外中の例外でしょう。
しかし、事務所の中身を正直に話さなかったというのは、事実。
どうしてか、ご自身の事務所経営の実態を正直に話すことはほとんどないようです。
仲のいい同業者には、自分の仕事が分かってしまい、「そんなもんか!」と言われたくない。
承継すれば、過去に自分の経営内容が分かってしますのが、怖い。
いい関係を続けていたいので、経営内容のチェックはお互いにしない。
どうやらこれがタイトルの大きな要因のようです。
事業承継支援室長
大滝二三男