税理士事務所の業務を担当する職員にとって、会計ソフトが変わるのは大きなプレッシャー。
同じパソコンを使うのだから、それほど抵抗はないだろうと考えるのは、素人そのもの。
毎日、いや毎年同じソフトを使ってきたことを考えると、同じような会計ソフトでも大きな違い。
打ち込む作業は同じでも、勘定科目もナンバーが異なるので、慣れるまでは大変。
事務所の経営者からすると、経営上コストを考えると、どうしても経費削減に重きを置く。
税理士事務所の立ち位置として、例えば全国的なユーザー会での組織には愛着がある。
この組織からの離脱は、事業承継の譲り側しても、どうしても避けたいという要望もある。
長年使いなれたソフト・システムと、それを使う仲間から離れるのは避けたいという。
もちろん、会計ソフトだけで税理士仲間ができているわけではないが、その道を断ちたくはない。
いわば、自分の立ち位置が、そのグループであれば、同じグループの人に譲りたい。
そう考えるのは、だれもが認めるところだが、はたして、その引き受け手がいるかどうか。
基本的には他のソフトを使用している税理士が、事業承継のため同じソフトを使用すると言う。
その一言で事業承継契約が成立したものの、コスト高などを理由に徐々にソフトを変更。
数年後には、職場から数十年使用して会計ソフトがなくなってしまったという。
果たして、これが契約違反になるのだろうか?(永久に使い続けるとはだれもが言わない。)
確かに、契約時には譲り渡し税理士事務所が使用していた会計ソフトを使うほうが効率的。
ところが、事務所の経営上、コストを考え、安いソフトにすることがベストとした場合はどうだろう?
事実、これまでの契約するときに契約書で、会計ソフト試用期間などを限定するすることは全くなかった。
交渉段階で、ソフトは継続使用するといった口約束(?)は、多くの場合存在した。
しかし、譲り渡した先生が経営の第一線から離れると、その問題はほとんど俎上に上らなくなる。
財布のひもを握る経営者として、高コストのものを使い続けるのはやはりリスクになる。
経営を続ける以上、顧客に負担がかからないのであれば、コストダウンするのも経営の基本。
果たして、約束違反として、契約を破棄することができるのだろうか?
今後はこの点もチェックの要あり。
事業承継支援室長
大滝二三男