個人事業主には退職金制度がありません。
自分が税理士事務所を閉鎖するときに、従業員には退職金を払いますが、自分はなし。
最近は税理士事務所も、そして税理士法人にも退職金制度がないところが急増中。
というのも、堪え性がないというか、職員の移動が他の業種に比較しても、激しいのがこの業界。
かといって、事務所を3,4か所も動いている人には、良い事務所ほど厳しく対応。
履歴書を見た段階でカットされるのも、数か所を流れている人。
もちろん、税理士資格があっても、その範疇に入る人はまずもって良くは見られない。
そんな人が多いので、退職員制度を設けても、じっくり仕事をしてくれるという保証はない。
それなら退職金などは独自のものから、中退金などの公的なもので済まそうという所長も多い。
自らが作成した退職金規定に縛られて、事務所を閉鎖することができないという話もよく聞くところ。
職員もこうなると、退職金に頼らず、自分年金などを設定するしかないような気もするが、どうだろう。
そこで、事業主の退職金だが、それまでにしこたま資産を蓄えてきたでしょうと言われるのが、税理士。
当社が仲介する事案でも、高齢になって借金で首が回らないという税理士はほとんどいない。
辞める時には、それ相当の資産を持ち、廃業後ものんびり過ごせるという人が大半。
それを支えているのが、年間84万円まで経費扱いで積んでいかれる小規模共済制度。
税理士さんの中には、顧問先の社長にこの制度を使うよう指導している人も少なくない。
いまでこそ、積んでいる掛け金の利子は微々たるものだが、この道40年という人は良い時もあった。
最終的に事務所を閉鎖するときには、数千万円の”退職金”が手にできるだけに、利用しないわけがない。
しかも、個人事務所を辞めて法人に加入するとなれば、その時点で”退職金”は満額出る。
仕事を続けることができ、同時に新たな仕事もできるとなると、まさに天下り官僚を髣髴とさせる。
事業承継の仕事をしていると、この共済金に伴う悲喜こもごもの人生劇場を見ることができる。
まさにサラリーマンの定年に伴う熟年離婚・退職金を手に離婚するという話も、あるかも。
しかし、税理士は死ぬまでできる資格ビジネスだけに、サラリーマンのようなことはない。
それでも、共済金が下りるときに、自分の好きなようにするという先生いる。
その共済金をもらい、事業承継でその対価を老後に使うというプランもあるのも事実。
厄介ない消費税のアップに伴う経過措置などに神経を使うより、のんびりしたいという人にも良い。
そんな小規模共済制度が、事業承継を後押ししているのも事実。
中には続けておけばよかったなあ、というため息をつく先生もあり、これには一言も口をはさめません。
若手の職員には自分退職金・年金を積んでおくことを、ぜひお勧めします。
退職金のない業界ですから、自分を守るためにも、仕事に、そしていざという時にあわてないだけに備えを。
事業承継支援室長
大滝二三男