勤務税理士が承継を拒否する理由がわからない、どうすればいいのかというご相談がありました。
長年勤め、顧客にも信用されている勤務税理士に事業を譲りたいというのは、ごく自然な考え。
当然継いでくれると思い、折に触れ、その気持ちを確認してきたが、はっきりしない。
所長として全責任を引き受けるのには、自ら実力がない、経営する能力はないというのか。
女性税理士の場合は、はっきりと「自分には事務所を切り盛りする能力はありません」と明解。
ところが、男性の場合は、「先生まだまだお元気ですから、このままの形で!」とはっきりしません。
こんな会話が長く続いていると、「こいつはおれが死ぬのを待っているのではないか」となる。
現実に、このような事例はよくある話で、そう考えたときに弊社に相談が来た。
勤務税理士10数年、日ごろから「自分は独立する気はありません」と明言していた税理士。
所長から、「そろそろ体もきつくなったので、事務所を譲りたいが、どうか?」と再度の依頼。
答えは、やはり「ノー」。
こうなると、後任を探さねばならないと、弊社に依頼が届く。
税理士法人の傘下は入り、先生も社員税理士に就任、職員全員も雇用される案を提起。
先生は大賛成。そのことを職員に表明し、全員の移籍を確認することに。
その確認段階で、勤務税理士が「私は辞めます」と、これまでの主張とまるで違う行動に。
事務所に勤務してから一度として反旗を翻したしたことのない、その職員の対応にびっくり。
さらに、当の税理士が担当していた顧問先が、次から次の契約解除。
しかも、この職員、自分が独立する際には、先生の顧客は一切もっていかないと宣言していた。
結果的にはこの宣言は嘘であったことが、数か月後には明らかになった。
「あの承継拒否、そして独立しませんの意味はなんだったんでしょうね」と先生も困惑気味。
それでも、「盗った、取られた」の水掛け論は今回も生じたが、結果は持ち逃げの勝ち。
独立する気がないから勤務税理士になるというが、やはり独立は税理士にとって”甘い蜜”
はっきりと心の内を吐露できない勤務税理士には、経営者も少し横目で見るのが妥当なのかも。
今回の事例の場合、結果として先生の顧問先の報酬、年額2000万円がなくなりました。
「持って行かれた」。遅いですよね、確認段階でそれなりの方策を考えるべきだったでしょう。
事業承継支援室長
大滝二三男