税理士事務所は”家業”と言われるほど、先生の家族が事務所で働いていることが多い。
事業も順調に行き、収入も右肩上がり、ないし現状維持のままだと、それほど問題は起こらない。
しかし、ここ数年のように税理士業界が不況業種と言われるようになると、家族に亀裂が生じることも。
先だって相談があったのが、「自分は辞めたいのだが、息子が許してくれない」というもの。
80歳を有に超えた先生方のお話で、息子のためにいつまでも働きたくないという。
息子さんの家族も複雑で、離婚歴があり、それは外国人との結婚、そして離婚。
子供が3人。その養育料を支払うために父親の事務所で働いている。
さらに、その息子さんは現在も内縁関係なる人との間にもう一人子供をあり、生活は大変。
そんな息子さんの現状を考えると、先生も勝手に事務所を閉じるわけにもいかない。
しかし、新しい税法も頭に入らなくなり、申告などは間違っていないか心配で、夜眠れないこともあるという。
さらに奥さんも少々ボケがでてきたため、介護が必要な状態にもなってきているという。
もちろん息子さんとは別居しているので、奥さんの面倒は先生が見なければならない。
どちらを取るかは先生次第だが、相談された当方も判断はできないければ、解決策ももちろんない。
息子さんが他の職場で働き、収入を得ればいいでしょうと言っても、中高年の職場探しは簡単ではない。
それも税理士事務所、それも父親の元でしか働いたことがない人には、求人側も後ずさりするしかない。
子供の養育費を払わず、自分一人の食い扶持を稼ぐだけなら何とでもなるだろうが、それもできない。
師走を迎えて、先生は又一歳をとる。
体もそして気力も一段と厳しくなるのだが、解決の道筋は見えない。
こんな相談にどのような回答があるのだろうか。
お父さんが引退して、息子さんは記帳代行会社を立ち上げ、これまでのお客さんの会計だけをみる。
税務申告など税務に関しては、他の税理士に依頼し、その事務所で処理及び申告をする。
こんな状況が多くあるが、これがまさに名義借りへの道筋となるのだから、お勧めはできない。
東京のチェック体制も厳しくなってるから、なおさらのこと。
これを救う手はあるのだが、息子さんが「イエス」というのは、非常に難しい。
親子関係をぶち壊すことなく、円満に解決できるよう力を尽くすしかない。
実はこの親子間の激しい罵り合いの現場にいた者として、それを”実況中継”するわけにもいかない。
抽象的なお話でご勘弁ください。
事業承継って、本当に難しいですね。
事業承継支援室長
大滝二三男