4年ほど前に、現役バリバリの60代前半の税理士から、相談があるという電話がかかってきた。
税理士会でも、若いころから様々な分野で活躍し、勇名も馳せていた先生だけに、当初は?
先生いわく、個人でやっていても先が見えているし、このまま歳を食っていくのどうしたものか。
税理士事務所としては、そこそこの事務所を経営している自負はあるが、何かもの足らない。
実際に職員十数名を抱え、年商も一人当たり1000万円を超える事務所を作り上げた。
しかし、その実績を評価する者はいないし、自己満足で終わっていくような気もする。
そこでどうしたらいいのかという、相談だった。
それ以前から10年以上の付き合いでもあり、同い年で、言いたいことも言い合える間柄。
それだけに、先生の心の内を考えると、若手を育てる方向で対策を考えることにした。
もちろん、自分の事務所の若手を鍛えるのでは、満足はできないし、そこには甘えも出てくる。
正当な評価をすることもできないことから、思い切って若手の成長株と一緒にならないかと提案。
候補の若い先生と税理士法人を作るのでは、どうしても上下関係で、上の立場になってします。
それでは、これまでと同じようなことが繰り返されるだけだと、先生も了承。
そこで思い切って、事業承継をして、その若手税理士の傘下に入って、働かないかと提案。
もちろん、自分の事務所は支店として、経営に当たるものの、経営権は相手の税理士法人に。
話はとんとん拍子に進み、成長戦略を進めている税理士法人との経営統合も出来た。
話が出てから6か月後には、年間の経営計画、利益計画を策定し、法人の支店として、スタート。
なかでも、スタートするに当たって策定された利益計画を必ずやり遂げると明言した先生。
経営統合した法人の代表は、開業して10年もたっておらず、その先生より20歳も年下。
そんな若手税理士に自らの”腕力”を見せつけ、その後の3年間も年々売上、利益ともに伸ばし続ける。
まさに、若い経営者とその傘下に入った中高年税理士のぴったり合ったマッチング。
来年はこのコンビで、さらに新しい支店経営がスタートするのだが、こちらも上昇気流に乗るはずだ。
自分の事務所で若手を育て、上手く事業承継できるケースはそれほど多くない。
今回のケースなどはまさにレアケースだが、今後はこのようなケースも増えてくるのではないだろうか。
事業承継支援室長
大滝二三男