こんな話をしてくれたのが、事業承継を決断された先生。
息子さんが大学卒業後10年余り、自分の後を継がせようと、受験勉強を強いた。
結果は税法が一科目も合格せず、ここ数年は勉強にも熱が入らない。
税法科目も受からない息子に、実務でも税法に関することは触らせなかった。
事務所での仕事といったら、もっぱらコンピュータへの入力。
さらに資格を持っていないものが、顧問先の社長などと接触するのは失礼。
そう考えた先生は、単なる資料の受けたりなどに息子を行かせていた。
これではお客さんとの会話も十分に行われず、単なるメッセンジャーボーイに。
身体が若干弱い面のある息子さんも、他人との接触は苦手と輪をかける。
「自分も歳をとってきたので、そろそろ潮時。息子を開放します」
つらい決断です。改めて社会の荒波に乗り出す息子さんも大変です。
でも、いつまでも子供の面倒を持ていることもできません。
親離れ、同時に子離れの時を迎えてようです。
少々、遅きに失したかもしれませんが、乗り越えなければならない大きな壁でもあります。
同じような環境に置かれた親子をたくさん見てきました。
受験勉強に精を出しているとばかり思っていた息子さんが、実は遊びほうけていた事例も。
資格ビジネスのまさに”死角”でもあるのでしょう。
中小企業の後継者も親の背中を見っていたら、とても継ぐ気にならないといった時代でもあります。
そんな状況の中で、資格がなければできない税理士の後継問題は、さらに深刻になるでしょう。
何時かは迎えなければならない場面ですが、本当につらい決断でしょう。
事業承継支援室長
大滝二三男