会計事務所の事業承継の相談は、所長税理士がすべて。
もちろん、事業承継の決断は経営者しかできないのは、当然の話。
そのステップですが、最初は経営者である税理士さんが、すべてを決めます。
当支援室の提案する承継先の先生に会うか、会わないか、からスタートです。
この段階では、職員には秘密です。なかには、奥さんにも話していないケースもあります。
数年前に承継を完了した事例で、先生が事前に奥さんに話さない理由を話してくれました。
そろそろ引退すると家族に宣言し、後継者と目する税理士を採用。数年間は勤務状況も良好。
ところが、後継者であると”自負”していたのが裏目に。なんと、所長をないがしろにするように。
これには、みんなの前で後継者として指名した所長も、怒るやら、情けないやらで、結局くびにした経験がある。
奥さんからも「勝手に候補者を決めてしまったから、失敗したんじゃないですか?」とぐちぐちと言われたとか。
それだけに当支援室に見えた時には、まず最初に「このことは誰にも言っていません」と宣言。
支援室の担当者が怪訝な顔をすると、それの事情を話してくれたわけ。
それからは、事務所職員に気づかれないように、「東京の○○ですが、先生いらっしゃいますか?」
携帯電話が今ほど普及していなかったので、事務所の電話を使って事務連絡には気を遣いました。
お相手の先生のことも電話で話すも、極秘資料などは郵送。これまた会社の封筒は使いません。
と言いながらも、職員に解封されてはたまりませんので、簡易書留で送ったりもします。
「お客さんでもないのに、なんでこんな書留が所長に届くのだろう?」なんて疑問も出ていたという。
最終的に契約が整った段階で、所長から事業承継の決意が語られ、ここまで来ては職員も反対できず。
もちろん、家族には契約前に”重大発表”を済ませ、「そろそろしょうがないでしょうね」との言質を取る。
人それぞれだが、前段の先生は契約が整ってから家族に宣言。反対など一切言わせず仕舞い。
長くなりましたが、この段階まで実は承継する事務所の所長さんは、職員たちと会っていません。
どんな職員がいるのかといった話は、譲り渡す先生から聞いてはいるが、その職員たちの実力は?
さらに、事業承継の引継ぎの際に、辞めていってしまうのではないか、不安がふつふつと浮かんできます。
でも、委譲する先生から「大丈夫。全員必ず先生の仕事に協力しますよ」と言われれば、ノーとも言えず。
やはり、契約後には堂々と職員たちとも面談し、全員の考えもしっかり聴取し、準備万端。
契約する前に、職員たちと会えば、彼らが所長を問い詰め、破談まで持っていくような剛の者もいます。
そうなると、彼らの職場もなくなるのですが、そんなことは考えません。
「先生に続けてもらえばいいんです。先生もまだまだ健康ですし、頑張りましょうよ」
なんて言われて、「契約をちょっと待とうか」と一言でも発しようものなら、「そうですよ、先生!」
あと何年仕事を続ければいいのでしょうね。
こんな形になったケースもこの7年間で、実は1件あります。
承継する先生、どうか”成功の法則”を信じてくださいね。職員に会えなくても、大丈夫ですよ。
事業承継支援室長
大滝二三男