東京都内では、あまり聞かないのだが、地方都市ではよく耳にする名義借りの会計事務所。
ほとんどのケースが、税理士の夫・父親が死亡し、家族の生活のために事務所を存続。
税理士の判子がなければ、税務署への書類提出ができないから、名義を借りる。
当初は代わりの税理士が見つかるまでと緊急の対応だったのが、ズルズルと継続することに。
名義を貸す税理士の名義料も、源泉徴収された顧問料の10%で良い先生もいる。
この10%ルールが多いのは、記帳代行はもちろん、申告書の作成などにも税理士が関与していないため。
何もしなくてもお金が入ってくる、この名義借りほど高齢の先生にはおいしいもの。
たとえ、見つかっても、そもそも事務所などを経営していない人がほとんだだけに、痛くもかゆくもない。
年金暮らしの税理士さんがアルバイトをしている感覚のようで、反省の色はほとんどなし。
処分が「税理士行為の禁止」となっていても、税理士で飯を食っているわけではないので、「ハイそれまでよー」
もっとも、この税理士の資格をはく奪されても、業界で堂々と活躍している人がいるのも事実。
資格にこだわるより、資格を超えて仕事に精を出す方が、社会的な評価も高いとおっしゃる御仁もいる。
これは例外としても、名義貸ししていた先生は資格を停止あるいは禁止されるが、民間人はどうなる。
罰金があるわけではなく、事務所の経営ができなくなるだけの話。
それまでのお客さんを他の事務所に紹介すれば、一時的な紹介料も手にすることができる。
でも、中高年になるまで税理士事務所だけに勤めていた人の再就職先は、ないに等く、非常に厳しい。
税務署の取り締まりの目が厳しくなっていることを、名義借りをしている経営者は知るべきでしょう。
一時的な名義借りが将来的には、自らの生活の道を閉ざしてしまうことにもなります。
なかには「隣の人が継ぎ方次へと貸し手を替えているので、自分もそうする」と言っていたあなた、大変ですぞ!
事業承継支援室長
大滝二三男