税理士事務所の賃金は他の業種に比較してやすい、という”評判”がある。
確かに、”一人親方”の事務所で、税理士試験を受けている職員の給与は安かった歴史がある。
それは、「試験勉強ができるよう、残業なども少なくしている」といった理由を挙げる経営者もいる。
確かに、夜間の予備校に行けるように、環境を整えている事務所も少なくない。
残業代がおきなウエートを占める業種だけに、残業がない職員の給与は当然少なくなる。
しかし、最近の事務所は極力残業を少なくし、コストを下げる経営を目指す方向にあるのも事実。
顧問先が”自然減少”する傾向も強い経営環境下において、当然の策でもある。
そんな努力をしても、会計事務所のコストの一番は、なんといっても人件費。
労働分配率が60%を超える事務所も中にはある。
仕入れがないのだから、コ人件費が最大のコストであることは、当然といえばその通りだ。
そんな中で、所長の”取り分が40%超もある事務所もあるのだが、これはまた例外。
所長が50歳を超えるころには、資産はしっかり蓄積し、いつ辞めても食っていけるなんて豪語するひとも。
まあ、こんな例は少ないが、会計事務所の職員への”配当”は50~55%が普通だろう。
これ以下だと、職員の給与は低く抑えられていると考えても、いいのではないだろうか。
しかし、所長の年齢が高くなると、この労働分配率も年々高くなる。
一人頑張っていた所長も、職員任せで十分事務所が回ってようになり、必然的に、所長の”取り分”は減る。
所長も自らの”生活費”も少なくなるので、職員の要求にも応え、分配率が高くなるわけだ。
それでも、一般的に高い給与を維持できている事務所は、なぜか経営数字を職員にも公開している。
頑張りようで、ボーナスも増えるということが分かっているので、その分モラールが高いと言えるのだろう。
給与に文句は言わず、一生懸命勉強して資格を取得し、早く独立する、このビジネスモデルもなくなりつつある。
それだけに、税理士事務所経営者は、顧問先からの報酬の減額には神経を使う。
安く使う、と言う考え方では、今や人は集まらなくなる傾向にある。
小さな事務所でも、意識次第で、一般より高い報酬を手にすることは十分可能だ。
長く職員がいられる事務所、それを願い、給与も高く維持する所長さんも少なくない。
そんな事務所も後継者がいなければ事業承継せざるを得ない。
従業員も、同じ考えを持つ経営者・税理士を期待するが、こちらは探し当てるのはなかなか難しい。
事業承継支援室長
大滝二三男