全国を回り、事業承継のお手伝いをしている中で、これまでに300以上の事務所の売上を見てきました。
この数字は、所長税理士の話だけでなく、先生の確定申告書などから把握したものです。
確かに売上が1億円を数千万円超える一人税理士事務所はあります。
しかし、元気な事務所でも、先生が一人の事務所では、その売り上げは良くて8千万円といったところ。
しかも、60代後半になると、事務所の売り上げは伸びません。
先生も営業力が伸びきったため、さらに営業しようという気力が萎えてしまっています。
こうなると後は下るばかり。先生が頑張らなくても、職員がお客を持ってくるといった話はほとんどありません。
なかには生活の安定だけが頼りの、職員の姿も浮き彫りになります。
なぜそんなことを言えるのかというと、当支援室のご相談があった案件を精査すると分かります。
先生曰く、「この職員はまともに仕事ができるのだが、自分からは余計なことは一切しない。」
さらに、20年近く雇っているが、一件も顧問先を持ってきたことがない、という。
お客さんに一言、「社長、お客さんを紹介してくださいよ」と言い続ければ、20年間で新規開拓ゼロはないはず。
その一言を言えないのか、所長が指導していないのか、定かではないが、事実ゼロ行進。
所長も諦めて、営業は自分だけがやる。職員には任せません。その結果が1億円に手が届かない事務所に。
こういった事務所の職員の給与は、一般企業の給与水準の下回ります。
それでも、職員は辞めません。所長の小言が頭の上を過ぎるのを待って、今日ものんびりと過ごします。
東京オリンピックが決まり、公共事業などが盛んになりますが、その好況が税理士事務所に来るのでしょうか?
27年から相続税の負担が大きく国民の背中にのしかかってきますが、その対策を提案できるのでしょうか?
はなはだ疑問です。もっとも、稼いでも所長の財布が膨らむだけといった事務所では、ダメでしょうね。
職員が自分の勤める事務所の数字を把握し、あるいは公開している事務所は伸びています。
というのも公開している事務所ほど、しっかりと職員にも利益を配当しているからです。
そんな事務所は税理士が一人でも、売り上げは一億円を超えているのです。もちろん例外もあります。
事業承継のお手伝いをしていると、先生方の財布の中身が分かりますので、こんな話もできるのです。
噂だけではない、真実の姿を見るにつけ、非常に複雑な気持ちのなる時があるものです。
幸い、黒衣として動きますので、職員の意見を直接聞き、悲しい思いをすることはほとんどありません。
でも、数字は事実を物語ってくれます。
事業承継支援室長
大滝二三男