税理士事務所のお客さんは、先生を代えるタイミングを計っていることがあります。
先日1年を経過した承継先の税理士法人に伺ってきました。
父親の税理士が病弱で、奥さんと息子さん、そして女性職員2名と言う体制の事務所の引継ぎでした。
息子さんは税理士試験に挑戦中で、残すはあと一科目という状態が10年近く過ぎていました。
大学を卒業してから、税理士試験を目指したのですが、その間に結婚し、お子さんは2人。
実務に子育てに、そして税理士試験勉強とほとんど多忙を極めている風に聞いていました。
そんな状況でお父さんが亡くなりました。実務の責任はすべて息子さんの方に乗っかってきました。
しかし、税理士がいないということでは、事務所は成立しません。
そこで、税理士に合格したら、事務所の客さんを”買い戻す”こと条件に、事務所を明け渡しました。
当然家族を養っていかなければなりませんので、自分も承継先に事務所に移り、心機一転です。
承継した税理士は息子さんの重荷を少し軽くしようと、顧問先を回って担当者の変更を伝えました。
ところがどうでしょう。「彼は毎月、月次決算を持って説明に来るはずが、ほとんど来なった」
「だから、先生が亡くなったので、これを機会に税理士さんを替えるkとに決めていた」と言うのです。
事務所に戻り息子さんを問い詰めてみると、「そんな約束はしていません。社長の作り話です」と抗弁。
何やら怪しい気運が分かってきました。
事務所の職員の話を聞くと、「いつもどこに行ったかもわかりませんし、奥さんも甘やかし放題でした」
いやはや、びっくりの連続です。
承継した事務所の副所長(税理士)がその職員の担当となり、指導することになりました。
「国立大学を出ているだけに頭もいいし、話はよく分かりますが、コミュニケーションはまるで駄目」
「冷静に自己を分析し、業務内容なども自分で責任を持ってやることができていない」
子供もいるし、平和な家庭を築いているようだが、社会常識が大いに不足しているいう評価。
それでも、あと一科目の試験に合格すれば、税理士になれるのだが、どうやら挑戦している風には見えない。
いつも遅くまで事務所に残って、時には事務所に寝泊まりしていたというのだが、それは何のため。
父親が生きていた時には、子供のいる家に帰るのも、時には週末のみと言うことが続いていたという。
その分勉強していたんだというのが母親の証言だが、果たしてどうだったのだろう。
今となってはその真相はわからないが、そのルーズさが業務にも出ていたようだ。
事務所を引き継いだものの、その息子さんが担当していた顧問先からは次々に契約解除の話。
そん結果、息子さんもいたたまれず、「税理士試験に専念します」と言う理由で、事務所から去った。
残った先は女性職員たちが担当していた顧問先がほとんど、これには承継先に先生もがっかり。
引継ぎができた顧問先を改めて評価するのだが、この事務所の評価は50点。半数が消えた。
こんな事例はそうそうない。承継した先生も言いにくいのだろうが、紹介者の当支援室もびっくりの事例。
これを悪い参考として、譲り渡し先の情報を正確に把握する決意を新たにした次第。
事業承継支援室長
大滝二三男