微妙な表現ですね。「少し疲れたから」
仕事に疲れたのでしょうか。それとも人に疲れたのでしょうか。
税理士事務所を経営して30年、40年となる節目で、そう言われる先生がいます。
現実に35年の経営に終止符を打った先生の話では、「仕事に向かう気力がなくなった」。
それを「疲れた」という表現しているのかもしれません。
確かに税理士業務は、様々な人との交流で気の休まることはないのかもしれません。
従業員が作成した申告書などをチェックし、そこに漏れがあれば、すべて所長の責任。
職員は一切の責任を負うことはありませんから、めくら判でことを済ますなんてことはできません。
なかには総勘定元帳から申告書、さらに付属文書などもすべてチェックしなければ気のすまない人も。
こうなると、月に処理できる業務量には限りがありますから、先生の労働量はそうとなものとなります。
そんな先生から、職員が辞めるので、その担当分をやってくれる先生に分割承継したいという話が。
でも、その職員の辞め方がどうやら問題がありそう。
先生も「少し記帳代行などを続けてもらうつもりだ」となると、承継先の先生は舵取りができない。
承継はするものの、元の担当者が業務を続けるのでは、その職員があくまでも主役。
雇っているはずの職員が好き勝手にすることも考えられるので、こちらがその相談を打ち切った。
自らが見ることができなくなったお客さんを他の税理士に渡し、その承継の対価も手に入れる。
それも一括して払ってほしいとの要望にも、応えることができないので、お断り。
この先生の場合は少しも「疲れて」いませんでした。気力旺盛で、仕事もし、お金も欲しいだったわけ。
「もう疲れた」と言う先生は、本当に腹が決まっています。
こちらから元気を出してくださいとは言いませんが、先生の事務所に合った候補者を選び出します。
そして、お客さんとの良き関係を続けられるよう、後任の先生に少々お手伝いをお願いします。
先生がすぐにいなくなっては、顧問先の社長さんたちも不安になります。
「信頼する先生にお願いしましたから、安心してください。私も一緒にお輝台しますから」と一言。
そう季節のせいもありますが、この時期に事業承継を決める先生は、実は非常に多いのです。
何時も書きますが、家を離れていた子供たちが夏休みで実家に帰った時に、話が進みます。
やはり、定年のない税理士さんですが、辞めるのもご家族の了解が一番なんでしょうね。
事業承継支援室長
大滝二三男