税理士事務所の承継後に、計算間違いなどで税額が不足していたなどという事例はあります。
事業承継契約の際に、納税者からの損害賠償等の請求に対しての決め事はします。
つまり、申告書等を作成したものがその責任を負うというものです。
当然、年の途中で承継することがほとんどですので、月次決算は前任者、申告は承継者となります。
この場合は、双方が責任を取りますが、月次決算そのものチェックで間違いは分かります。
ですから、このケースではあまり大きな間違いは出ないのが普通です。
ところが、すでに申告済みのケースで、大きな間違いが発見されることがあります。
この場合はどう対応するのでしょうか?
しかも、前任者が顧問先から依頼されていたある処理を怠っていたケースがありました。
それも新たに損益通算ができなくなる日時が決まったいたものを、それを時機を逸してしまったもの。
さらに、その金額は数億円にもなろうというものでした。
前任の先生も高齢で、その改正に目が届かなかったのかもしれません。
その期日は承継された時点では半年以上も過ぎていましたので、もう打つ手はありません。
税賠保証も受けられませんし、そもそもそんな大きな金額の保険には入っていませんでした。
しかし、先生のご家族には身体障害のあるお孫さんもいて、資産は一戸建ての二世帯住宅だけ。
とても、損害賠償に応ずるだけの資産はなさそう。
承継した先生から、その大きなミスを発見されたということが、弊社に伝えられました。
顧問先は承継しましたが、前任者のミスを話すべきかどうか迷っているというものでした。
承継者には責任はありませんから、前任者に話をすべきなのだが、つっらい話だというわけ。
そうこうしているうちに、譲り渡した先生が倒れ、その半年後に亡くなられました。
損害賠償は相続人にも及びますから、すでに裁判等が進んでいれば、請求は相続人にも。
最終的には、承継者は前任者には話をしませんでしたし、顧問先も先生の死亡で、話はたち切れに。
こんな大きなケースは実は一件しか報告されていませんが、小さな間違いはかなりあるようです。
しかし、信頼関係を築いたところで、間違いを指摘し、喧嘩をするのも嫌だというのがほとんど。
それだけに、責任の所在を双方確認する契約が、何より必要ではないでしょうか。
事業承継支援室長
大滝二三男