まさか、税理士さんにこんな事情がある方はいないでしょうね。
定年を迎えたサラリーマンの奥さんが、よく言う言葉のようです。
毎日決まった時間に家を出て、帰ってくるのもほぼ同じ時間。
奥さんにとって、こんな習慣は実にありがたいものです。
子育ても終わり、やっと自分の時間が持てたのに、また新たな負担が。
そうなんですね。子育ての時にはお父さんの収入が何より。
一般的なサラリーマンに比べて、余裕のある収入がある税理士に満足の奥さん。
もちろん、サラリーマンの奥さんに比べても経済的にはゆとりがあることも認識済み。
しかし、夫がサラリーマンと同じように仕事を辞めて、毎日が日曜日になるには抵抗も。
「定年のない税理士だから嫁に来たのに、、」とは、言わないだろう。
でも、会社の規定によって、仕方なく辞めさせられる職務ではない税理士。
そんな税理士である夫が、突然辞めると言われても、奥さんは納得できません。
ここ数年税法が細かく改正される中で、税理士もその対応に相当の心を砕いている。
対応を誤ると、当然将来的に損害賠償なども請求されることも無きにしも非ず。
単純に記帳代行だけで税理士業務が終わっていれば、問題はないのだが。
税法との関連で、一度間違いを犯せば、数か月の業務停止は必定。
日ごろから税法との”格闘”を余儀なくされている税理士として、処分などもってのほか。
それを避けるとき、当然税理士資格を返上することも、大きな選択の一つ。
濡れ落ち葉は嫌だと言われても、税理士業務の大変さを考えれば、もう辞めます。
そんな決断をされた税理士さんの相談を受けるとき、無情に親子の愛情の希薄さを感じます。
何故でしょう。税理士業務の大変さを、ひょっとすると、奥さんや家族は分かっていないのでしょう。
きっと、そうに違いありません。
父親が業務を継続するリスクを考えるとき、家族はそのリスクを理解できないハズです。
「もう、辞めーた」と、簡単に言える先生は本当に少ない方々です。
多分、日ごろから奥さんと十分話し合って、結論が出たに違いありません。
そうであれば、”濡れ落ち葉”発言は、絶対に出てくる言葉ではないでしょう。
事業承継支援室長
大滝二三男